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最も好調な男、清武弘嗣の代表観。
「監督の指示」と「自分の判断」の間。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/08/26 16:30
代表合宿では長谷部と並んで先頭を走るなど、代表チームの中で存在感を発揮していた清武弘嗣。復帰後も絶好調は維持しているか。
絶好調で期待が高まる矢先に、骨折。
責任を背負い、結果を残す。最高の形でシーズンを締めくくったばかりだったからだろう。この時期の清武からは、ピッチの上だけではなく、ピッチの外でもたくましさがにじみ出ていた。
だからこそ、千葉での海外組だけの合宿で聞いた彼の話は、説得力を持っていた。
「ハリルさんは厳しいし、要求もすごく高い。でも、それを裏切らないでピッチで良いプレーを出せば、きちんと評価してくれる。そういう自由があるのかなと思います」
ハリルホジッチ監督の厳格さばかりがクローズアップされていたこの時期に、“その先”のものが清武の目には見えていたわけだ。
調子が良い。そして、監督の要求に応える作業の先にも目を向けられている。
その清武がどんなパフォーマンスを披露するのか。イニシアチブを握って、チームを引っ張るようなプレーが見られるのではないか。代表での期待は膨らんでいた。
しかし、Jリーグでプレーする選手が合流して横浜で改めて合宿が始まった頃、清武の右足に痛みが走った。右足の第5中足骨の骨折、いわゆる疲労骨折だった。高校2年生の秋に左足に同じ怪我を患った経験もあり、早期の復帰を望んだ清武は6月12日に手術に踏み切った。
「あのときの経験があったから、今回も手術をすることに怖さはなかったです」
清武はそう振り返るが、16日のW杯予選のシンガポール戦はおろか、その5日前のイラクとのテストマッチでプレーすることさえかなわないまま、リハビリに汗を流す日々を迎えることになった。
「超楽しかったし、身体もキレてましたから」
ただ、早々に手術に踏み切ったこともあり、リハビリの経過は順調そのものだ。
8月18日にハノーファーの練習場を訪れると、クラブスタッフとともに自転車で病院から戻ってくる清武の姿があった。検査の結果、復帰へのゴーサインが出たという。表情も明るい。すでに8月23日にはサブ組とともに練習に加わり、8月25日からチームの全体練習に本格的に合流することになった。
怪我をした当時のことを、清武はこう振り返っている。
「超楽しかったし、身体もキレていましたからね。調子が良いなぁと思いつつも、そういうときにやっちゃうんですね、と。まぁ、しょうがない。そのかわりゆっくり休めたし、そこはプラスに考えていますよ」