プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・小林誠司のリードが変わった!
頭で描く配球から、投手本位へ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/08/22 10:50
ポスト阿部として小林誠司の前には万全のレールが敷かれているかに見えたが、プロの世界はそれほど甘いものではなかった。それでも、着実に小林は階段を上っているといえるだろう。
マイコラスとのコンビで見せた投手本位のリード。
7月22日の阪神戦(甲子園)での出来事だ。
この試合で先発マスクをかぶった小林だが、先発のアーロン・ポレダ投手との呼吸が全く合わずに、ポレダは1回から首を振りまくっていきなり3失点を喫するという試合があった。真っ直ぐを投げたいポレダと、変化球でカウントを取ろうとする小林の意思がまったく噛み合わなかった。
「気持ち良く投げさせてあげられなかった」
試合後の小林は反省しきりだった。
秦真司バッテリーコーチも苦言を呈した。
「あれだけサインが合わなければ、うまく試合を運べない。どう攻めるか、準備段階からやっておかなければならないし、課題を残した」
ただ、そこから少しずつ小林のリードに変化は見られている。
いかに投手の望んでいるボールを気持ち良く投げさせて、しかし走り過ぎそうになったときにそっとブレーキをかけてやれるか。そういう小林の成長譜の一つが、8月18日の阪神戦でマイルズ・マイコラス投手が1安打完投を見せた試合だった。
以前は1回からスライダーやカーブなどの変化球をコーナーに多投させてカウントを稼ごうとしていたのが、今はまずは真っ直ぐをガンガンとストライクゾーンに投げ込ませるリードに変わっている。球威があって、多少甘く入っても力で相手打をねじ伏せられるというマイコラスのアドバンテージを生かした、投手本位のリードになっているのである。
マイコラス自身も、どんどんストライクで勝負していくメジャースタイルが投球のリズムに合うし、球数を抑えることにもつながる。捕手としては物足りない部分もあるかもしれないが、そうして小林がバッテリーの呼吸を合わせることで、2時間50分のスピーディーな締まった試合となったわけだった。
強肩という最大の武器に、打撃も着実に改善中。
小林には、強肩という捕手として最大の武器がある。その捕手としての絶対的アドバンテージを持っているからこそ、1年目から一軍に抜擢されてきたはずである。ところがそのアドバンテージでは埋めきれない欠点もあった。それが小林のこれまでだった。
しかしリードでの変化に加えて、非力と言われた打撃でも、勝負どころで思い切ったスイングができるようになってきている。8月1日の中日戦では今季1号の同点ソロ、8日の広島戦では敗れはしたが5回に一度は同点に追いつく2号を放つなど、しぶとさも出てきた。
原監督の言う「毎日の成長」があるということだ。この1カ月でようやく小林は正捕手への階段を一歩、登ったのである。