ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
松山英樹が他競技経験者に羨望!?
「ゴルフしかやってこなかったから」
posted2015/08/13 10:40
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AFLO
「彼は4歳にして、1日に1300球も打った」
松山英樹がゴルフを始めて間もない幼少期に残した逸話のひとつである。
父に手を引かれ、訪れた打ちっぱなしの練習場。打席マットの下から自動で出てくるティの上のボールを、彼はただひたすらに打ち続けた。
「どんどん出てくるボールを、ただポンポンって打っていくのが楽しかっただけなんだけど……」
精神統一をして放つラウンド中のショットを想定したものとは少し違う、まるでゲームセンターの“モグラ叩き”のような感覚だっただろうか。英樹少年は、父よりも多くボールを打ったことが分かると、それはそれは誇らしげな顔をしたそうだ。
小学生時代、松山は夏休みの間、近所の練習場にほぼ毎日通ったという。さすがに1日1000球以上もの打ち込みをすることはほとんどなかったが、週末には実際のコースに出向き、パッティング、アプローチ用のグリーンで長い時間を費やした。
地元の愛媛から高知へ。中学2年で明徳義塾に編入した後も、誰よりもボールを打ち込んだ。中学高校時代の監督・高橋章夫氏が「練習の課題を持ち帰るために、試合に出ているような感じだった」と振り返るほどである。
「僕はゴルフしかやってこなかったから」
三つ子の魂百まで――松山の幼い頃の姿勢は成長した今も変わらない。米ツアーきっての練習の虫。そしてその舞台裏の研鑚を誇ろうとする素振りもない。世界でも一線級のプロゴルファーになるためにはやはり、幼少期から誰よりも多く鍛錬を重ねる必要があろうことは、想像に難くない。
しかし、松山本人の考えは、少し違う。
明日を夢見る全国のゴルフ少年・少女に松山が送るメッセージはこうだ。
「いろんなスポーツをやった方がいいと思う。ゴルフだけに限らず、野球でもサッカーでもなんでもいい。僕はゴルフしかやってこなかったから、余計にそう思う」
およそ20年間彼自身が歩んできた道とは明らかに違う。ただゴルフだけに身をささげるな、というのである。
それはなぜか。
「だって……こっちに来たら“そんなヤツ”ばっかりなんすよ」――。