青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
なぜ石川遼は涙を見せたのか?
マスターズが狂わせた18歳の心。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2010/04/14 10:30
昨年は73位で、今年は49位タイで予選落ち……。その涙は来年の強さを約束しているはずだ
石川遼にとってマスターズはすべての原動力である。「最後の目標はマスターズで優勝すること」と言うのだから、ゴルフをする理由そのものと言ってもいい。
しかし、今回のマスターズでは、その思い入れの強さが石川に自分のゴルフを見失わせる原因になってしまった。必然の結果として、2度目の挑戦は2日間で幕を閉じた。
4月8日に開幕したゴルフの祭典。初日の石川は序盤こそ硬さが見られたものの、パープレーでスコアをまとめて32位と上々のスタートを切った。
迎えた2日目は前日よりはるかにシビアなピンポジションに加えてグリーンの速さと風の勢いも増し、非常にタフなコンディションになった。そんな中でも13番のパー5でバーディーを奪ったところで通算スコアを1オーバーとしていた。
残り5ホール。この時点で確定はしていなかったが、カットラインは3オーバー。
自分本来のゴルフを見失い、息もできないほど緊張していた。
ゴールが見えたかに思われたところで、石川のゴルフが突如として乱れ始める。
のしかかる重圧に体のコントロールが効かなくなり、14番からことごとくパットが打ち切れなくなった。16番を終えて通算3オーバーとあとのない状況に追い込まれると頭は真っ白だった。
「自分のゴルフを信じ切れずにその場その場で対応しようとしたことがいけなかった。最後の方は何をどう考えたらいいのか分からなくて、体もすごく燃えるように熱くて、息もしにくかった」
一打ごとに身を削り取られていくような鋭い緊張感。むき出しにされた心は、オーガスタの熱気にあおられて熱く火照っていた。
17番をパーでしのいで、18番のティーグラウンドに立った時、追いつめられた石川はこんなことを考えていた。
「予選を通過するにはここはパーでいい。第2打が長いアイアンになってもいいから、2打でグリーンに乗せよう。ドライバーは左のバンカーに届くか、届かないかギリギリだけど、届かなければいいな。フェアウエーに止まってほしい」
パーを欲しがるあまりに思い切りを欠いたドライバーショットは大きく左に曲がった。なんとか3打目でグリーンをとらえて5メートルのパーパットにすべてを懸けたが、願いを込めたボールはカップのわずかに左をすり抜けていった。