ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
松山英樹が他競技経験者に羨望!?
「ゴルフしかやってこなかったから」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2015/08/13 10:40
ゴルフ漬けの生活を送ってきた松山英樹だが、意外にも他競技の経験がないことを残念に思っているという。
他のスポーツの動きを取り入れたトレーニングも。
さらに言えばゴルファーが身につけるべきスイング中の細かい動作が、必ずしもショットやパットの練習だけで覚えられるとは限らない。
「ゴルフの体の動きは、必ずしも自然なものではありません」と言うのは松山の転戦に帯同する飯田光輝トレーナーである。
「例えば、右打ちの選手なら体の左にボールを飛ばすのに、体を左に動かし過ぎては(突っ込んでは)いけない。“矛盾した動き”を、一生懸命、体に覚えさせようとする。ケガは避けなければなりませんが、他のスポーツの動きをトレーニングに取り入れることには意味があります」
現在、松山は体のバランスを整えるために左投げでのキャッチボールをメニューに取り込むことがある。他のスポーツで体を鍛えることは、ゴルファーとして成功するために遠回りではないと、彼は肌で感じている。
松山「中途半端でも、好きだと思えることをやればいい」
一意専心――といった、何かひとつの物事に打ち込む姿勢こそが美徳という考え方もある。裏を返せば、あらゆることに手を出せば、それぞれが中途半端になってしまうという恐れもあるだろう。
だが松山は「中途半端でもいいんじゃないですかね。やっぱり、自分が好きだと思えることをやればいい。(親御さんも子供たちに)やらせてあげた方がいい」という。
たとえ興味がゴルフから他のスポーツに分散しても、「好きである」「楽しい」と思う感情は何物にも代えがたい。
「縄跳びって、3分間跳ぶのを3セットやれと大人が言われたら本当につらいでしょう。けれど、子供の頃はずっと跳ぶことができた。好奇心を持てれば、いろんなものを培える。いつかゴルフを選んだ時に、それをどう活かしていくか。遊んでいるうちに体が鍛えられていくなら何よりです」(飯田トレーナー)
疲れも知らず、多くのことに興味を持って外を走り回れるのは、子ども時代の特殊能力である。結局のところ、好きでなければ何事も長続きしにくいし、長時間のトレーニングに勤しむ情熱にも限度がある。だが、好奇心に支えられた行動なら別なのだ。