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中邑真輔の戦いが限界を超えている!!
G1クライマックス、レスラー達の矜持。
posted2015/08/10 14:30
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph by
Essei Hara
微妙な話だ。
新日本プロレスの夏の祭典『G1 CLIMAX』が開催中である。今年で25回目となる。
エントリーは20選手で、A、Bの2つのブロックに10名ずつ分かれての総当たりリーグ戦。それぞれのブロックで最高の勝ち点を挙げた2選手が、8月16日、両国国技館で優勝決定戦をおこなう。
7月20日の北海道での開幕を皮切りに、興行は日本じゅうを全19戦というロングラン。真夏の開催であることも加味して、世界じゅうのプロレスシーンを見渡してみても、もっとも過酷なイベントといって問題ないだろう。
しかし、世界一過酷なリーグ戦とはいえ、レスラーたちは全戦を闘い続けている。決められた全戦をこなせる以上、どれだけ過酷なのかが正直、ピンとこない。当たり前の話だが、客席にプロレス経験者はひとりもいないのだから。
G1にかぎらず、プロレスでは、思わず会場から悲鳴があがってしまうほどの大技(必殺技)が連日飛び出している。やられたレスラーは受け身が取れたのか取れてないのか、しばらく立ち上がれない。あれはどう考えても痛いぞ、ヤバいぞってことは伝わる。自分たちなら即病院送りか、いやいや、一発で死んじゃうかなとか考える。
それでも翌日、大技をくらったレスラーはまた違う街で、前日のダメージを感じさせることなく闘っている。“いちおうは平気”なのだ。
このレスラーの“いちおうは平気”なのが微妙だ。
深夜4時――激痛で目が覚めた。
今大会、中邑真輔が左肘の負傷で一時戦線離脱をした。
7月26日の広島、28日大分、29日福岡の3戦を欠場して、8月1日の大阪大会より復帰を果たし、現在も最終戦に向けて突っ走ってる最中だ。
7月23日の静岡大会、カール・アンダーソンとの公式戦でのこと。場外でアンダーソンに投げられた中邑は、コンクリートの上で受け身をとった際に左肘にすり傷を負った。当然、痛みはあったが、出血は伴っておらず、“いちおうは平気”だった。
しかし2日後の25日、香川で永田裕志戦を終えた、深夜4時くらいに激痛で目が覚めた。ホテルの部屋でのことだ。