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中邑真輔の戦いが限界を超えている!!
G1クライマックス、レスラー達の矜持。 

text by

井上崇宏

井上崇宏Takahiro Inoue

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photograph byEssei Hara

posted2015/08/10 14:30

中邑真輔の戦いが限界を超えている!!G1クライマックス、レスラー達の矜持。<Number Web> photograph by Essei Hara

復帰直後のG1で、IWGPインターコンチネンタル王者の後藤洋央紀を破った中邑。5月に奪われたベルトのリベンジだけでなく、IWGP王者への挑戦権も見えてきた。

致命傷なのに……気丈に振る舞うレスラー達。

 鍛えられた肉体が商売道具のプロレスラーにとって、どんな試合をしようが、どんな技を食らおうが、“いちおうは平気”であるというのが矜持であることは間違いない。

 だから、このことを伝えていいのか悪いのか、やはり微妙な話だが、ぼくは伝えたい。

 正直、G1各会場のバックステージは野戦病院さながらだ。そのリーグ戦の厳しい闘いで、レスラーたちは試合前、試合後、あちこちで床にへたりこんでいる。すれ違いざまに挨拶をしても、力なくニヤッと口元に笑みを浮かべてくれるのみのレスラーがほとんど。欠場さえしなければ、負傷箇所を公表する責任などないから知られていないだけで、いろんな選手がいろんな箇所に“致命傷”を負っていることがわかる。トレーナールームには常に誰かが横たわっている。それでもひとたび自分の入場曲が鳴り響けば、大見得を切ってファンの前に姿を現わす。そして勝ったほうも負けたほうも、“いちおうは平気”な態度でまたバックステージへ引き揚げていき、テレビカメラの回っていないところでバタッと膝をつく。

「じゃあ、ちょっくら今日も生き抜いてきますよ」

 G1はとても絶妙なバランスで成り立っている。日程が、試合がいかにハードだろうが、レスラーはみんな最後まで生き残りたい。勝ちたい、負けたくないという気持ちと同じくらい、生き残りたいと思っている。その選手のモチベーションこそがG1というドル箱シリーズの生命線だ。

「俺らは個人の限界、『自分に負けたくない』という思いで闘ってるから、『このまま(シリーズに)戻れないかも』というのはまったく考えなかったですね。それこそ、最終日だろうがなんだろうが絶対にリングに帰るっていう。結局、俺だけじゃなく、みんな自分に負けたくないから(自分自身に)嘘をついて闘ってるんでしょうね。(中略)親の死に目にも会えないと覚悟して入ってきた世界だから、やれるだけのことはやろうと思ってます。とにかく生き残る、いや、生き抜くですね。じゃあ、ちょっくら今日も生き抜いてきますよ」(中邑)

【次ページ】 優勝決定戦の8月16日。全レスラーが生き抜いた姿を!

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