スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサとレアルの下部組織が危機に!
期待の若手を次々と放出する理由は?
posted2015/08/05 10:40
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
バルセロナのトップチームが史上2度目のトリプレッテを実現したチャンピオンズリーグ決勝の6日前、バルセロナBの3部降格が決まった。
バルサBはジョゼップ・グアルディオラが監督に就任した'08年夏から本格的な強化に乗り出し、34年ぶりに降格した4部から僅か3年で2部の舞台に返り咲いただけでなく、本来であれば1部昇格が見える順位を争うほどに力を付けてきた。
並行して、グアルディオラ率いるトップチームにセルヒオ・ブスケッツ、ペドロ・ロドリゲス、ジェフレン・スアレス、アンドレウ・フォンタス、イサーク・クエンカ、クリスティアン・テージョ、チアゴ・アルカンタラらが次々と昇格。2012年11月のレバンテ戦ではトップチームで史上初めて11人のカンテラーノが公式戦のピッチに揃うという快挙まで実現するに至った。
しかし当然ながら、トップチームの登録枠や試合に出られる選手の数は限られている。'11-'12シーズンは12人、'12-'13シーズンは15人、'13-'14シーズンは17人とチームを占めるカンテラーノの数が増えるにつれて下からの昇格枠は減り、運良くトップチーム入りできても継続的なプレー機会を得られず、飼い殺し状態となる選手が増えていった。
主力の離脱や補強禁止制裁はチャンスでもあったが……。
それだけに、昨夏生じたカルロス・プジョルの引退とビクトル・バルデス、セスク・ファブレガスらの退団、そしてFIFAから受けた補強禁止の制裁は、新世代にチャンスを与える良い機会になるはずだった。しかし、ここでクラブは即戦力の大量補強というより確実な道を選んだ。
結果としてチームは、ルイス・スアレスやイバン・ラキティッチの活躍により三冠を獲得するという最高の成績を手にした。しかしその陰で、飛躍を期したマルティン・モントーヤ、マルク・バルトラ、セルジ・ロベルトら多くのカンテラーノたちが前シーズン以下の出場時間にとどまることになった。開幕当初に抜擢されたムニル・エルハダジやサンドロ・ラミレス、セルジ・サンペールらも、トップチームから離れる期間が長くなるにつれて調子を落とし、シーズン後半はBチームでもベンチを温めるようになってしまった。