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「おまえのプレッシングは素晴らしい」
マインツ監督絶賛、武藤嘉紀の献身。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2015/07/30 17:30
攻守に膨大な運動量と献身性を見せつけていた武藤。試合後は「かなり良かった」と自身のプレーに満足していた。
試合では献身的に走り、前線からプレスをかける。
これまではサイドのMFでの起用が多かったこともあるが、スペースに飛び出してパスを受け、そこからシュートへ持っていくシーンが多かった。実際に、彼は何度もこんなことを口にしてきている。
「自分が欲しい場所と、味方が出そうとしている場所には、たぶんまだズレがあるから。そこでコミュニケーションをはかっていかないと」
チームメイトとの間に、活かし、活かされるような関係を築くことで結果を残そうとする姿勢が目立っていたわけだ。
しかし練習では、ヨーロッパで活躍するストライカーのような、力強さと泥臭さを身につけようとしている。まだまだ引き出しはある。そう感じさせるに十分なシーンだった。
そしてラツィオ戦。ボルシアMGなどのオファーを蹴って今シーズンから10番を背負うマリと2トップ組んで、試合開始のホイッスルを聞くことになった。
試合開始直後から、武藤は前線からの猛烈なプレッシングを見せた。相手キーパーへのバックパスが出ると、狩りをするかのようにキーパーに襲いかかる。相手陣内の低い位置でディフェンダーがボールを持ったときも同じだ。直接ボールを奪うシーンこそなかったものの、強烈なプレスが相手のミスを誘発すると、スタンドからはその都度拍手が送られた。
監督「おまえのプレッシングは素晴らしいぞ!」
とにかく、武藤のプレーには迷いがない。そのプレーぶりのヒントは、実は22日のモナコ戦にあった。試合は1-5で敗れたが、チームを分析したシュミット監督からこう声をかけられた。
「おまえのプレッシングは素晴らしいぞ!」
武藤自身も、守備でのチームへの貢献についてこう振り返っている。
「守備の面ではかなりわかってきました。すっきりと、前線からの守備で自分の良さを出していく。攻撃だけではなく、守備のところも監督が自分をフォワードで起用してくれる理由だと思うので、しっかりやっていきたいと思います」
ラツィオを無失点に抑えられた理由の一つが、効果的な前線からの守備だったことに疑問の余地はない。