オフサイド・トリップBACK NUMBER
金権体質を批判しても始まらない!
日本のFIFA報道に欠ける3つの視点。
posted2015/06/24 10:30
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
AFLO
様々なゲストや事情通がひとしきり持論をぶった後、司会者が愁いを帯びた表情でカメラを見つめながら、「FIFAの腐敗や金権体質は困ったものです」と嘆息してみせる。最近、TVで頻繁に目にするようになった光景だ。
サッカー史上最大のスキャンダルが、日本にもいかに大きな衝撃を与えたかは、スポーツニュースや新聞だけでなく、お茶の間向けのワイドショーでも取り上げられたことからもうかがえる。
発端は5月27日、FIFAの役員7名が収賄の容疑でスイスの司法当局に逮捕されたことだった。ほぼ時を同じくして、アメリカ合衆国の司法省はFIFAの役員を総勢9名、企業関係者など5名を起訴したことを発表する。主な嫌疑は、W杯の2018年大会と2022年大会招致を巡る買収疑惑、2011年の会長選挙における買収疑惑、W杯のスポンサー契約や放映権契約を巡る贈収賄疑惑などだった。
仏大会や南ア大会、「神の手」もみ消し事件なども。
その後の展開については、周知の通り。
5月29日の会長選挙で五選を果たしたはずのジョゼフ・ブラッター会長は、当選の4日後に突然として辞意を表明する。金権体質の象徴と目されるだけでなく、腐敗解明の最大の障壁ともなっていた人物が一歩身を引くことにより、スキャンダルは真相究明に向けて大きく動き始めるかに思われた。
だが実際には、事態はますます混迷の色を強めている。最近では'98年大会と'2010年大会の招致を巡る疑惑や、2010年大会の欧州予選プレーオフにおける「神の手事件」のもみ消し工作も発覚。一連の騒動の余波で、W杯2026年大会の開催地選考作業は保留されている。捜査が進めば、さらに新たな事実も明るみに出てくるだろう。
シニカルな物言いをする、ヨーロッパの知人ジャーナリスト曰く。
「『腑に落ちない』『これは裏があるんじゃないか』と思ったケースが、ことごとく俎上に上がってくる。そういう意味でも、珍しい事態になっている」
ワイドショーのキャスターが、嘆息してみせる回数が増える所以だ。