オフサイド・トリップBACK NUMBER
金権体質を批判しても始まらない!
日本のFIFA報道に欠ける3つの視点。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2015/06/24 10:30
FIFAのジョゼフ・ブラッター会長(左)と、UEFAのミシェル・プラティニ会長。FIFAの巨大権力を巡る綱引きはまだ終わっていない。
サッカーに人気がある以上、バブルは避けられない。
それは欧州のクラブサッカーで起きている現象を見れば、一目瞭然だろう。
年々増加するビッグクラブの予算、確実に値上がりしていくスポンサー契約料金や放映権料、そして高騰し続ける選手の移籍金。今やスター選手の移籍金が100億円を超えるケースは珍しくなくなりつつあるし、プレミアが新たに結んだ放映権料は3年間で約9300億円にも上る。
なぜこのような現象が起きているのか。理由は簡単。サッカーがスポーツ界で最も魅力のあるコンテンツであり、世界で一番多くのカスタマー(ファン)を抱える金の成る木だからだ。
極論するならば、仮にFIFAがW杯の放映権料をつり上げていなかったとしてもバブルは膨らみ、サッカー界全体が集金マシンと化していた可能性は極めて高い。
W杯の放映権料で稼ぐプランはUEFAの前会長が発端?
関連して述べれば、W杯の放映権料がかくも跳ね上がったのは、FIFAのジョアン・アベランジェ前会長やブラッター会長の施策だけによるものでもない。むしろキーマンは、UEFAの前会長であるレナート・ヨハンソンだった。
FIFAの副会長も兼任していたヨハンソンは、オリンピックに比べてW杯の放映権料があまりに低いと判断。テレビ中継をスポンサー獲得の手段として利用するのではなく、放映権そのものを高く売ることで収益を上げるプランを提案する。彼は'98年の会長選挙でブラッターに敗れたが、新たなビジネスモデルはFIFAにしっかり定着した。
その意味で放映権料ビジネスとは、きわめてヨーロッパ的な発想に基づくアイディアなのである。1990年代、現行の欧州CLの基本的な枠組みを作り、サッカーに近代ビジネス的な考え方を持ち込んだのがヨハンソンだったという事実は示唆的だ。