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今季前に、バルサを去るはずだった。
シャビの「まるで映画」な1年間。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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photograph byGetty Images

posted2015/06/11 10:30

今季前に、バルサを去るはずだった。シャビの「まるで映画」な1年間。<Number Web> photograph by Getty Images

リーガを8度、CLを4度、W杯を1度、EUROを2度制したシャビ。彼は、現代パスサッカーの歴史において、間違いなく最重要人物の1人に数えられることになるだろう。

出番ゼロでも勝利を祝ってくれた仲間を思い出して。

 いずれにせよ、もともと戦力になれないことを理由にバルサを去ろうとしていたシャビにとっては、簡単に受け入れられる状況ではなかったはずだ。

 だが、スペインの一般紙のインタビューで直接問われたシャビの答えに恨み節はなかった。

「もちろん辛かったさ。でも、試合に出られなくても黙ってチームを引っ張っていた仲間から僕は学んだ。出番ゼロにもかかわらず、レギュラーのように勝利を祝っていた控えのゴールキーパーたちを鑑にしていたんだ。ジョルケラ('09年までバルデスの控え)やレイナ(バルサでもスペイン代表でもほぼ控え)のことをよく思い出していたよ」

 頭を切り替え、「子供の頃に教わったこと――チームのことを考えろ――をしたまで」というシャビは、出場機会へのこだわりを捨て、“ベストイレブンの常連”からただの“チームの一員”に戻り、ひたすらチームの勝利を願った。

メッシと監督の衝突を仲介し、契約延長までした。

 一方で、キャプテンの責務はしっかり果たしており、結果的に今季のキーパーソンの1人となっている。

 今年1月、監督に対する不満を溜めこんだメッシと当のルイス・エンリケが衝突したときのことだ。

 シャビはイニエスタらチームの重鎮とともに事態収拾に動き、釈然としないメッシに言って聞かせた。

「俺たちは前進しなきゃならない。また昨季と同じことになるのはごめんだってお前もわかってるだろ。クリスティアーノ(ロナウド)がまたバロンドールを獲ってもいいのか。レオ、騒ぎを起こすな」

 この一件をきっかけにチームはまとまり、士気を高め、タイトル獲得へ向かってまい進し始めた。

 '13年1月末、バルサとシャビは'16年6月末までの契約延長に合意した。

 今年に入ってバルサはこれをさらに2年延長すると申し出ていたが、シャビは逆に残りの1年の解消を求め、5月21日、正式に退団を発表した。

「妻や家族、友人に相談して下した最終的な決断だ。さみしくなるけど、ここを去る時が来た。でも、今シーズン残ったのは正解だったと思う」

【次ページ】 「こんなラスト、想像もしてなかったよ。まるで映画だ」

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