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黒田博樹と筒香嘉智の3打席を読む。
濃密な5球で繰り広げられた駆け引き。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/05/18 12:00
2004年の松中信彦以来11年ぶりの三冠王誕生の期待を背負う筒香嘉智。黒田博樹もリベンジを期しているはずだ。
足の影響か、この日は制球力が定まらなかった黒田。
【第3打席 5回表】
回が進むにつれ、黒田の投球が不安定になっていく。制球力が定まらないのはやはり足首のケガの影響なのか?
5回表、3-3の同点に追いつかれてなおも2死二塁、ここで打席に筒香が入る。
私が注目したのは、初球の入りだ。
1回表は内角ファストボール。
4回表は外角にボール気味のファストボール。
そして3度目となるこの打席で、黒田はまず外角にファストボール系の球(おそらくツーシーム)を投げたが、これが大きく外れてボール。しっかりと足を踏ん張れず抜けるような形になってしまい、やや不安になる球だった。
そして2球目。ここで黒田―會澤翼のバッテリーは筒香に対して初めてスプリットを選択する。會澤のミットはやや内角寄りに構えられた。しかし――ボールはドロンと真ん中寄りに入り、それを筒香は見逃さなかった。
センター前にクリーンヒット。これでDeNAが逆転に成功した。
黒田は後続を抑えたが、5回裏に代打を送られて降板した。
黒田と筒香の対戦は、わずか5球しかなかったものの、非常に見ごたえがあった。何より、好調の筒香の気迫が見ていて楽しくなってくる。
追い込めば筒香を打ち取れる可能性は高まるが……。
筒香の積極性は結果にも現れており、カウント別の成績は次のようになっている。
0-0 24打数11安打
1-0 16打数10安打
1-1 18打数9安打
2-1 10打数5安打
逆に追い込まれた場合は、滅法打てない。
1-2 22打数4安打
2-2 23打数4安打
3-2 18打数1安打
黒田はこの傾向を把握していただろうが、カウントを稼ぐことが出来ず、2安打を許した。ストライクを取るというよりも、ファウルを打たせられなかった――という感じではないだろうか。
今回の対戦は筒香に軍配が上がったが、黒田の体調が上向き、制球力が増してきた時の再戦を見てみたい。
40歳と23歳の対決、2015年のプロ野球の楽しみのひとつになりそうだ。