セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「脂汗と喘ぐ息の勝者」ユベントス。
レアルを退け、CL決勝に至る95分間。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/05/14 14:30
CL決勝進出を果たし、喜びを爆発させるブッフォンとキエッリーニ。意外にも、ブッフォンはCLでの優勝経験がない。37歳、このチャンスを逃すわけにはいかない。
レアルが走り、ブッフォンは味方に叫び声を上げた。
一方、国内リーグ戦を休息にあて、万全の態勢で臨んできたはずのユベントスのプレーは妙に軽かった。
この日、伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、今大会の決勝トーナメントに出場した全チームの走行量を示すデータ記事を掲載している。
ベスト4に残ったチームのうち、現王者レアルの試合平均走行距離が108km弱なのに対し、トップのユベントスは116kmも走破していた。先に王手をかけたトリノでの1戦目も、ユーベが運動量で圧倒した。
しかし2ndレグでは、先制したレアルがまるで1戦目のユベントスと入れ替わったかのように前線からしっかりとプレスに入り、ペナルティエリア内でも人数をかけて守備を固めた。
指揮官アンチェロッティは、1戦目で狙われたDFセルヒオ・ラモスのサイドハーフ起用を捨て、本職のセンターバックに戻している。これによって安定した4バックが、ユーベの中盤を分断した。
41分、C・ロナウドとFWベンゼマが、速攻から立て続けに惜しいシュートを放った。
ユベントスの守護神ブッフォンは、あまりにも簡単に自陣侵入を許す守備陣へ、たまらず大声をあげた。MFピルロやMFマルキージオ、そしてカリアリ戦で2カ月ぶりに復帰したばかりのMFポグバで組まれた中盤がパスミスを連発し、ボールをキープできていなかったのだ。
レアル育ちのモラタが左足で起死回生の同点弾。
ベルリンまで、あと45分。
“白い巨人”の勢いは、止まらないかに見えた。
しかし、青いアウェー用ユニフォーム姿のユベントスは、57分のセットプレーでついに目を覚ました。
エリア右サイドのFKを、MFピルロが蹴り込む。こぼれ球を拾ったMFビダルが左前方へ素早く展開し、MFポグバが頭で競り合いながら、ゴール前へつなぐ。
ボールを胸トラップで受けたFWモラタは、その落ち際を左足で低く叩きつけた。シュートはGKカシージャスの手を弾き、レアルのゴールネットへ突き刺さった。1-1のスコアなら、ベルリンへ行くのはイタリアの“老貴婦人”だ。
起死回生の同点弾を決めたFWモラタは、この日も派手なゴールパフォーマンスを己に禁じていたという。育成年代からサッカー選手として育ててくれた古巣への敬意を表すためだ。もみくちゃにされた仲間たちの輪から解放されると、モラタは胸の前で小さく十字を切った。