時計の針が進むごとに研ぎ澄まされていく集中力。

　同点に追いついたことで、ユベントスは勝機を見出した。“後がない”という緊迫感はさらに高まり、チームの集中力は最高潮に達していた。

　67分に、レアル指揮官アンチェロッティがFWチチャリートを投入すれば、ユーベ監督アッレグリは、78分にCBバルザーリを投入する。一戦目と同じ3バックへ守備戦術を変更した上で、両サイドハーフも自陣に留める実質5バックを敷いたのだ。

　交代したMFピルロには、つねに辛辣な批評眼を持つことで知られるベルナベウの観客たちからも拍手が送られた。1stレグを前にした現地紙インタビューで「もし優勝できたら、ユーベでのキャリアに終止符を打ついい機会だ」と語っていたベテラン司令塔は、来季の大会ではその姿を見られないかもしれない。

　70分にMFマルキージオが、88分にはMFポグバが、それぞれ追加点の絶好機を失敗した。ただしユベントスの集中力は、時計の針が進むごとに、相手が窮するごとに、より研ぎ澄まされていった。

　銀河系軍団も最後の攻勢をかけ、左右から揺さぶり、放り込み、打ちまくった。84分にもFWベイルのシュートがゴール右を襲ったが、この夜、何本打とうが彼のシュートは決して枠の中に入ることはなかった。

全員が脂汗を浮かべ、プレッシャーに耐えていた。

　1－1のまま前後半のロスタイム合わせて95分間が過ぎたとき、エリクソン主審が笛を吹いた。

　全員が脂汗を額に浮かべて、心臓が飛び出しそうなプレッシャーに耐えながら、喘ぐ息でベルナベウを這いずり回ったユベントスが、勝者だった。

　ベルリンまで0分。

　ユーベは、12年ぶりにCLファイナルの切符を手に入れたのだ。

　試合後のベルナベウには、ペレス会長に辞任を求める怒号が飛び交っていた。

“CLは2年続けて優勝できない”というジンクスは、大会を3度制した名将の銀河系軍団をもってしても、今年も破れなかった。

　敗戦の将アンチェロッティは、「我々は可能性の限りを尽くした。1－0とした後、もっとリードを広げるべきだったが、うまくいかなかった。これもサッカーだ」と平静を装ったが、自身の去就に対する発言は「シーズン後にクラブが判断するだろう」と語るに留めた。

　アンチェロッティはリーガ最終節までの2試合ベンチ入り停止処分が下ったばかりで、この2ndレグがレアルでの最後のベンチになるかもしれない。

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