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7戦ぶりの勝利は、完全復活なのか。
元王者・ロレンソの天敵は「雨」。 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2015/05/09 10:40

7戦ぶりの勝利は、完全復活なのか。元王者・ロレンソの天敵は「雨」。<Number Web> photograph by Satoshi Endo

母国スペインGPの表彰台の頂点で、久しぶりの勝利の大ジャンプ。その高さは衰えを感じさせないものだったが……。

ウエットコンディションでの情けない走り。

 しかし、「復活」は果たして本物だろうか。

 ロレンソは昨年も今大会のような強いレースを何度も見せている。今大会の優勝も、そういうレースだった。

 今年に関して言えば、序盤の3戦で表彰台に立てなかったことがロレンソへの評価を厳しくしていた。

 不調の理由は彼のコメント通りに、ヘルメットの不具合だったり、風邪のために体調を崩していたり、タイヤのグリップをうまく引き出せなかったりということなのだろう。

 そういったレースを見て「ロレンソはもう終わった」という厳しい評価がくだされていたのだと思う。

 しかし、僕が「終わったのかも知れない」と感じる理由は、ここまでの3戦のようにドライコンディションの走りの中にはない。

 最近のロレンソで気になるのは、ウエットコンディションの際のあまりにも情けない走りだ。

転倒骨折の翌日に決勝を走り称賛されたが。

 一昨年のシーズン中盤戦のオランダGPで、ロレンソは雨になったフリー走行で激しく転倒した。

 そのときに左鎖骨を骨折したが、その日のうちにスペインに飛んで、折れた鎖骨をプレートで固定する手術を受けた。翌日、予選終了後にオランダに戻ってきたロレンソは、痛み止めの注射を受け決勝に出場して5位でフィニッシュ。

 その熱走に大きな拍手が送られたのだが、実はこのレースを境にロレンソの走りは本来の鋭さを失っている。

 というのも、レースを終えて痛み止めの注射の効果が薄れてきたときの痛みは想像を絶するものだったらしい。

 大きな怪我をした選手が本来の走りを取り戻せないまま消えていくのは、そうした痛みを身体が覚えていて以前のように攻めることが出来ないからだと言われるが、ロレンソもそのひとりではないかと僕は思っているのだ。

【次ページ】 一昨年の思い出を克服したときこそ、完全復活に。

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