セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
リッピ、ネドベド、ブッフォン――。
CLで12年前の再現を狙うユーベの魂。
text by

弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/05/04 10:30

ここ数年は国内で無敵を誇りながらも、欧州の舞台では結果を出せずにいたユベントス。ドイツに奪われたCL出場枠を取り返す意味でも、国内の熱狂は大きい。
アッレグリ「彼らとてグラウンドに立つのは11人」
ユーベの指揮官アッレグリにとって、今回の準決勝は、指導者として初めて挑む大舞台だ。アンチェロッティより8歳若く、初舞台に心逸るアッレグリは、対戦が決まると自身のツイッターで威勢よく吠えた。
「(相手は)巨大で敵を威圧するスタジアムを持つ、欧州最高峰の監督率いる現欧州王者……。だが、彼らとてグラウンドに立つのは11人。そう、われわれと同じようにだ!」
アッレグリはダイヤ型の中盤を持つ4-3-1-2か、サイド攻撃で打ち合いも辞さない3-5-2で、セミファイナルに臨むはずだ。抽選後に行なわれたセリエA32節トリノ・ダービーではまさかの黒星を喫したが、この敗戦を「番狂わせは起こせる」という意味で選手に活を入れ、格好の教訓とした。
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「われわれも最後まで王者に挑む義務がある。全員が“レアルを倒せる”と心底信じるのだ。さもなくば、戦う意味などない」
受けて立つアンチェロッティが、3度のCL優勝経験を誇る歴戦の名将であることは言うまでもない。ユーベの監督OBでもあるアンチェロッティは、イタリア人指揮官らしく、あえて軽妙な受け答えに徹し、手の内をさらけ出すことはしない。
「(攻撃志向の)スペインリーグとCLはちがう。うちはユーベ戦で自陣に引きこもっても構わないと思っているし、ゴールマウスの前にバスを置いて(守備に専念して)もいい。だが、うちの攻撃陣がリーガで100ゴール近く挙げていることを忘れないでほしいね」
アンチェロッティは準決勝でも、現有戦力で使い慣れた4-3-3を敷いてくると見られている。
醜く泥にまみれる戦いぶりこそ、ユーベの真骨頂。
ユベントスがASモナコを下した準々決勝、180分間のトータルスコアは「1-0」。決して煌びやかなゲームではなかった。むしろ醜い、と形容した方がふさわしいかもしれない。
それでも、ユニフォームを泥だらけにした試合後の選手たちの顔は、準決勝進出という任務を完璧にやり遂げた達成感と手応えに満ちていた。アッレグリは、名将カペッロの時代にもコンテ政権時にも乗り越えられなかったベスト8の壁を破った選手たちを「ミスしてはならないというプレッシャーに打ち勝った」と労い、褒め称えた。
どんなに名のある選手であろうとも、全員が一兵卒のように、醜く泥にまみれる戦いぶりこそ、かつて欧州を席巻した常勝ユーベの真骨頂だからだ。