「ときにはバカになることも大事じゃないですか」

　左サイドバックの亀川諒史も、岩波の肌触りに同意した。「秋葉さんがいい雰囲気を作ってくれています」と切り出した。

「初めてチームに来たときに、手倉森さんから五輪の経験を持っていて、チームにプラスをもたらしてくれるという紹介がありました。これから1次予選へ向かっていくなかで、分からないことがあればどんどん聞いていきたいです」

　ただ、秋葉自身に「チームを盛り上げなければ」といった過度の意識はない。「練習が活気づいているのでは？」と問われると、「ああ、ハハハハ」と少し枯れた笑い声をこぼした。

「監督にはドシッとしていてもらって、ここだってときに話してもらったほうが選手にも言葉が届くと思いますから。チームの一体感を高めるためには誰かがどんどん声を出したり、ときにはバカになることも大事じゃないですか。そういうことをやるのが、僕は現役のころから好きだったんです。

　トレーニングがスムーズに進んで、選手が真剣に取り組む環境作りができたら、と。選手の力を引き出すことが、何よりも大事ですから。彼らが能力を最大限に引き出せるように、自分は頑張っていきます」

　アトランタ五輪代表での秋葉は、チームを後方から支える存在だった。実に19年のときを経て、39歳になった彼はチーム内のパイプ役として五輪予選突破を自らに課している。決して色褪せることがなく、むしろ輝きを増す思いを胸に秘めて。

「代表チームは僕にとって誇り高いもの。国を背負う責任と重みをしっかり感じて、監督と選手を全力でサポートします」