濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
スクリーンにも押し寄せるMMAの波。
映画で格闘技はどう進化してきた?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by2013 Beijing Starlit Film and TV Culture Ltd.co
posted2015/02/28 10:35
『スペシャルID 特殊身分』は2月21日(土)より新宿武蔵野館他にて公開、順次全国公開予定。
主人公がディフェンスから学んでいくというリアリティ。
たとえば、主人公の一人リン・スーチー(エディ・ポン)はテコンドーの経験者。そのため最初のスパーリングではローキックに弱く、蹴りのブロックから覚えることになる。試合までの期間が短いため、寝技はディフェンスを集中的に練習。
そんな男が勝ち上がるにつれ、寝技主体の選手と真っ向からグラウンド勝負を展開するようになるところに“成長”の意味が込められているわけだ。もう一人の主役、ニック・チョン演じるチン・ファイがラストバトルで見せる奇策も、関節技のあるMMAならではのものだ。
『スペシャルID 特殊身分』で展開される緻密で壮絶なバトル。
2月21日から公開中の『スペシャルID 特殊身分』も中国=香港映画で、現在のアジアを代表するアクションスター、ドニー・イェンの主演・アクション監督作。“潜入捜査官もの”の格闘シーンに、違和感なくMMAの要素を取り入れている。
ドニー・イェンは、スタント・コーディネーターの谷垣健治とともに2005年の『SPL/狼よ静かに死ね』から格闘シーンにMMAの要素を取り入れた、いわば先駆者だ。当時は日本では総合格闘技ブームだったものの、世界的に普及していたわけではなかった。腕ひしぎ十字固めを映画の観客が見ても、どこがどう痛いのか分からない。そんな状況からの出発だった。
しかしMMAが普及し、映画としての見せ方も熟成され、2007年の『導火線 FLASH POINT』は映画の魅力とMMAアクションが見事に融合した傑作となった。そしてこの『スペシャルID』では、さらに緻密で壮絶なMMAバトルが展開されている。
なにしろ、クライマックスの闘いがバックの取り合いから始まるのである。タックルで倒し、三角絞めから腕十字へと連携。ポジショニングの攻防もある。