MMAの局面がドラマの比喩としてとシンクロしてゆく。

　中盤では、大勢の敵を一人ずつ確実に“仕留めて”いくドニー・イェンのアクションが堪能できる。普通のアクション映画なら、ハイキックで敵を吹っ飛ばせばそれで終わり。だがドニー・イェンは倒れた相手にトドメのパウンドを食らわし、投げ技は確実に頭から落として首を折る。そんな“仕留める”闘いの説得力をさらに増加させているのは、腕固めで関節をへし折る場面だ。

　この2作品に関して言えば、MMAは単に“流行を取り入れた”というだけのものではない。『激戦』では、MMAの多様な局面を乗り越えることが主人公のドラマとシンクロしている。『スペシャルID』の主人公は経験豊富で、作戦遂行にあたっては勘と臨機応変さを重視。そのキャラクターには、殴り合いから投げ、寝技と目まぐるしく変化するMMAバトルがふさわしい。

　つまり映画の内容とMMAが不可分になっているのだ。言い方を変えれば、MMAというスポーツには映画を面白くする力がある、ということだ。