野球クロスロードBACK NUMBER
全ポジションでレギュラーを白紙に。
広島・緒方新監督のこだわりとは?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2015/02/27 11:20
守備練習で野間峻祥(右)の指導を行なう緒方監督。現役時代にはゴールデングラブ賞5回、盗塁王を3回獲得するなど、守備、走塁のスペシャリストだった。
オープン戦では勝敗より、個人能力の見極めを優先。
例えば9回1死二塁の場面。
會澤がセンター前に運んだにもかかわらず、二塁走者の上本が打球の判断を誤り生還できなかった。安打1本でひとつでも先の塁を狙う姿勢、相手の小さなミスも見逃さない集中力。大量リードしている試合だからこそ、逆にそのような強い意識を持ってプレーしなければ、ペナントレースの大事な局面で同じ過ちを繰り返してしまう。
指揮官はそれを予測していたのだろう。だからこそ、怠慢プレーを絶対に許さなかった。翌日も、前日の試合で走塁ミスをした上本に改善が見られないと判断するや、怒号を飛ばした。
開幕前の今だからこそ徹底させなければならないことがある。オープン戦が始まる前、指揮官はそれを物語るコメントを残していた。
「オープン戦では勝ち負けよりも個人の能力を判断したい。うちは守備と走塁が課題だと思っているんで、戦術を細かく詰めていく作業も大事だけど、まずは選手たち個人の表現やアピールの仕方を見ていきたい」
今年こそ……と24年ぶりの優勝を誓う!
今季はきっと、評論家の多くが広島を優勝候補に挙げるだろう。
一昨年は若手の台頭、ファンの後押しもあって勢いに乗り、球団初のCS出場を果たした。優勝を目指した昨年は、あと一歩のところで本拠地でのCSを逃す憂き目を味わった。
今年こそ――と、カープファン全員が24年ぶりの戴冠を待ち望んでいる。
近年の広島にはなかった厚い選手層。明確なチームカラーのもと、熾烈なレギュラー争いを促す指揮官もいる。
王者の条件は揃った。
今は未熟かもしれない。だが、ペナントレースに突入すればその野球は成熟し、数多くの勝利を掴むはずである。