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あるプロレスラーの死地彷徨――。
ヨシタツに降りかかった不運と幸運。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/02/08 10:50
米国で活躍していた頃のヨシタツ。WWEという世界最高峰のリングで覚えた華やかなスタイルを、再び日本で披露する時を待ちたい。
プロレスラーの“性(さが)”とは言うものの……。
これが昨年末に入院するまでにヨシタツに起こったことの顛末だ。
もちろん故障した日に新日本の忠告通りトレーナーの診断を受けていたのなら、結果として死の淵を彷徨い歩くような危険を犯す必要はなかっただろう。しかし世界中からトップレスラーが次から次へと集まって来る中、数少ないチャンスを着実にものにできなければ簡単に解雇されてしまう過酷なWWEの世界にヨシタツは約7年間も身を置いてきた。
もちろん体調管理は自己責任。ヨシタツを含めすべてのレスラー達が多少の怪我を隠しながらリングに上がるのは当然の世界だった。最後まで手足の麻痺もなく骨折ではないと判断していたヨシタツにとって、新日が用意してくれた最高の檜舞台を自らフイにするという選択肢は存在しなかったのだ。それがレスラーの“性(さが)”と片づけてしまうのはあまあまりに乱暴かもしれないが……。
プロレスの神様はそんなヨシタツを見捨てず、最悪の悲劇だけは回避することができた。現在は常人以上の速度で回復を続けており、早期復帰を目指し懸命なリハビリ生活を送っているという。まさにレスラーとして新たな命を授かったヨシタツが再びリングに上がる時、果たしてどんな輝きを放つのだろうか。
本当の意味での凱旋復帰を待ち侘びたい。