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ユーベのポグバに136億円オファー!
「ジダンを売った男」が語る移籍論。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/01/22 10:30
ポグバは昨夏のブラジルW杯では5試合で1得点。仏代表のベスト8進出に貢献し、最優秀若手選手にも選ばれた。
ポグバはもちろんユーベのアイドルだが……。
ユベントス経営陣が獲得目標とする選手たちのうち、いずれも移籍5000万ユーロ級と見られているFWファルカオ(マンU)かFWカバーニ(パリSG)のうち一人を獲り、DFフンメルス(ドルトムント)とMFルーカス(パリSG)を獲っても、資金繰りにはまだ余裕があるのだ。
マロッタCEOもしたたかなもので、すでに“ポグバ2世”を発掘済みだ。昨年の夏、パリSGから移籍金ゼロで獲得したU21フランス代表MFコマンは、ネドベドの背番号11を与えられ、ポグバの後継者への道を歩み始めている。
無論、金色に光るモヒカンをたなびかせ、しなやかな体使いから斬るようにシュートを放つポグバは、ユベントス・スタジアムのアイドルだ。
だが、ユベンティーノたちは“100,000,000ユーロ”という桁外れの数字を前に、放出容認派と断固引き留め派の間で揺れている。彼らは14年前のジダン・トレードがもたらした恩恵をよく覚えている分、余計に悩ましさが募る。
同僚、指揮官、代理人と交錯する思惑。
ビッグクラブを渡り歩いてきた同僚FWテベスが「あいつは化け物じみたプレーを頻繁に見せるようになった。(来季)どこでプレーするかはあいつ次第だ」と達観する一方、ほぼ生え抜きのMFマルキージオは「成長するにはユーベの環境がベストだ」と中盤の同僚へ残ることを促す。
現場を預かる指揮官アッレグリは、1億ユーロ報道を受けた後、「今はうちの選手。若くて上手いポグバをあらゆるクラブが欲しがるのは当然。6月になれば何でも起こりうる」と、顔色一つ変えずに言い放った。半ば放出を観念したような物言いだが、案外、夏の大補強を見越した笑いを噛み殺しているかもしれない。
「そう長く、ユーベがポグバを引き留められるとは思わない。今年か来年か、移籍交渉の機会はあるだろうね」
曲者で知られる代理人ライオラは、すでにユーベへ揺さぶりをかけ始めた。完全に売り手優位なのだ。交渉の過程で、ユベントスでは到底容認できない年俸900万ユーロを移籍先に約束させるぐらい朝飯前だろう。この1月中の動きはないにせよ、シーズン終了後に何らかのアクションを起こすのは間違いない。