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選手権ベスト4進出の流通経済大柏。
練習時間の短縮が生んだ意識改革。 

text by

茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byKYODO

posted2015/01/09 16:30

選手権ベスト4進出の流通経済大柏。練習時間の短縮が生んだ意識改革。<Number Web> photograph by KYODO

全国でも有数の激戦区である千葉県予選を勝ち抜き、選手権でも強さを見せている流通経済大柏。選手権の優勝は2007年度のみ。2度目の戴冠なるか。

リーグではポゼッション、選手権では縦の速さ。

 その視察を経て、本田監督は「ゲーゲン・プレッシング」のエッセンスをチームに注入することを決めたという。

「プレミア(リーグEAST)での戦い方とトーナメント戦である選手権の戦い方は違います。リーグではポゼッションを大事にしてきましたが、ボールを失わないようにしすぎるがあまりに“意味のない時間帯”ができることが多くなりました。『選手権ではこんな風には行かないよ』と伝えて、縦への速さをもっと意識するようにしました」

 ポゼッションだけでなく、素早い切り替えでボールを奪い、スピーディーに相手ゴール前へと仕掛けるドルトムントに似たパターンも駆使する。それが流通経済大柏の戦い方に幅をもたらした。

練習時間の短縮と、メニューの張り出し。

 さらに、戦術以上に選手たちの意識改革を生んだ変化があった。

 それは、練習時間である。

 主将を務める廣瀧直矢は、以前との違いをこう語った。

「以前の練習は、かなり長時間でしたが、監督の帰国後は長くても2時間を超えるくらいになりました。あと、その日に取り組むフィジカルなどのメニューが張り出されるようになったりもしましたね」

 ちなみに同校のホームページに記載されているサッカー部の練習時間を見ると「平日3時間、土日祝日4時間」となっているため、1日あたり1時間以上短縮したことになる。ドルトムントの練習を見て、本田監督は戦術以上に“練習効率”に着目したのだ。

 日本の部活には伝統的に、「質より量」という風習がある。ただ同時に、練習時間が“長すぎる”というケースも往々にしてある。

 筆者が昨夏、あるJクラブの下部組織の練習を取材した時のことだ。その日はリーグ戦の試合前日ということもあったが、全体練習は1時間10分ほどで終了。あとの20~30分間は自主練習でヘディングやロングパス、ドリブルからのカットインシュートなどそれぞれのスキルアップに励んでいたのが印象に残っている。また高校勢でも、学業との両立を掲げる國學院久我山は、練習時間を2時間半以内と設定していた。

 とはいえ、どちらのチームの練習も“軽い”わけでない。むしろ5分~10分ごとに次々と練習メニューが変わるため、選手たちは絶えず頭を使ってプレーしなければならない。ミニゲームでも実戦と同じレベルの激しさが要求され、終盤になると肩で息をする選手も見られた。

【次ページ】 サッカーは最長120分で勝敗を決める競技である。

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