濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
ヒクソンの次男クロンがMMAデビュー。
グレイシーを背負う“業”の重み。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2014/12/28 10:50
課題とされていたスタンドの技術は結局未知数のままだった。これからどんな相手と戦っていくのだろうか。
「自分がグレイシーであることはプレッシャー」
何があっても最後には一本を取る。クロンのファイトスタイルとルール変更要求からは、そんな古風な“格闘思想”が透けて見える。それを、グレイシー一族としての責任に自覚的だと言い換えることも可能だろう。
「自分がグレイシーであることがプレッシャーにならないと言ったら嘘になる。でも、それは期待されているということでもあるし、サポートもしてもらえる。プラスの面だってあるんだ」
試合後のクロンはそう語った。デビュー戦でメインイベントを務めたことは「僕にとって宝物だよ。普通の試合より勉強になるからね」とも。
クロンの入場テーマ曲は、ヒクソンが使っていた『砦の戦い』ではなかった。同じ『ラスト・オブ・モヒカン』に収録された別の曲なのだという。その距離感が“現代のグレイシー”らしいという気がする。クロンはヒクソンではないし、無敗の幻想をまとうのは現代では難しいだろう。それでも彼は、グレイシーとして闘うのだ。