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「全日本選手権にこだわっています」
羽生結弦が臨む、年内最後の大舞台。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO

posted2014/12/26 11:00

「全日本選手権にこだわっています」羽生結弦が臨む、年内最後の大舞台。<Number Web> photograph by AFLO

羽生結弦にとって、2度目の出場となった2009年の全日本選手権。この年は、ショートプログラム13位からフリーで追い上げての6位。同じシーズンに世界ジュニアでチャンピオンとなっている。

「全日本選手権という名前にこだわっています」

 初優勝を遂げたのは2012年。

 このときは、ショートでどのような演技を見せるのかにまず注目が集まっていた。グランプリファイナルのあと体調を崩し、思うように練習できずに迎えたからだ。

「(6分間練習でも)駄目で、余裕がなくて緊張で脚が震えました」

 羽生自身、そう振り返った。その中で、トップに立った。

「緊張していて、表情が作れなかったかなあと思います」

 と、課題を口にしつつ、充実感も示した。

「難しいブルースを表現するため、全力疾走せずに余裕をもってやるということが、つかめてきました」

「(不安のある中でも)いい演技ができたと思います」

 この大会では、全日本選手権への思いも口にしていた。

「日本一にこだわっているんじゃなくて、全日本選手権という名前にこだわっています」

 ショートのあとでそう語った羽生は、フリーのあとにも言った。

「ノービス(9~13歳)の頃から、1位になりたいと思っていました」

 羽生にとっても、全日本選手権は特別な大会であったのだ。

2013年は「心臓が押しつぶされるくらい緊張」

 他の大会にはない緊張や重圧があり、強い思い入れのある大会。そのときどきに悔しさを味わい、課題を見出しながら、あるいは手ごたえも感じつつ、前へと進む力を得てきた。

 それはソチ五輪代表を決める優勝となった、2013年の全日本選手権でも同様だった。

「オリンピックの選考を兼ねている全日本は初めてだったので、これほどまでに緊張するのかと、ほんとうに心臓が押しつぶされるくらい緊張していました。その中でもどれだけ自分のペースを守れるか、今まで学んできたことを実行できるかを考えていました」

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