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阪神JFで対決したディープの姪と娘。
ロカが敗れたのは血の濃さなのか。
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/12/30 10:40
今年もディープインパクトは種牡馬リーディングを独走。姪であるロカの真の実力はいかほどだろうか。
ゲートが開くと、スタンドからどよめきが。
もちろん2歳牝馬のレースだから歴戦の勇などといった存在はいない。過去にもウオッカは2戦1勝で出てきて勝っているし、ブエナビスタも未勝利戦を勝ったばかりの身で1番人気に推され楽勝した。ジョワドヴィーヴルみたいに新馬勝ちのあとに連勝した馬もいる。だから、可能性がないわけではないのだが、コースも違うし、重賞勝ち馬やいい持ちタイムの馬もほかに出てきている。
それでもロカが1番人気に支持されたのは、伯父ディープインパクトという血統のブランドに多くのファンが惹かれたからではなかったか。
だが、いざゲートが開くと、スタンドからはどよめきがあがった。ロカが大きく出遅れてしまったのだ。ロカは一番内側の1番枠に入っていた。この枠で出遅れてしまうと、普通にスタートしてロスのないコースを取ろうと進路を内寄りに変えるほかの馬たちに前がふさがれてしまい、行き場がなくなる。
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こうした場合の取るべき道はふたつ。ひとつは開き直って最後方に腰を据え、距離のロスのないラチ沿いを進んで、直線で外に持ち出し勝負をかける乗り方。もうひとつは馬のいない外に進路を取り、早めに押し上げて先行集団に取りつき、参戦資格を確保する方法。前者は最後まで瞬発力を維持することはできるが、その力が期待ほどではなかった場合、見せ場もなく敗れることもある。後者は戦いの輪に加わることはできるが、前半の消耗が最後に響く心配もある。
この日のロカと和田竜二は後者の乗り方を選択した。外を回って押し上げて、早めにとりつき勝負に加わろうとする乗り方だ。1番人気に支持されていて、前半寝たふりをするわけにはいかないという気持ちもあったかもしれない。だが、出遅れから外を回って追い上げる戦法は1戦のキャリアしかない馬にはきびしかった。多少前との差は詰めたが、結局終始外を回され、直線でも伸びを欠いて8着に敗れた。
やはり姪より娘のほうが結びつきは強いのか。
勝ったのはショウナンアデラ。これもロカほどではないがやや出遅れた。しかし、すぐに馬群の中に紛れ込むことができ、レースの流れに乗り遅れなかった。直線では坂で前が開くと強烈な伸び。先に抜け出していた重賞好走馬のレッツゴードンキをあっさりとらえて2分の1馬身差でゴールした。
ショウナンアデラはこの日の18頭のうちでただ1頭、ディープインパクトを父に持つ馬だった。実の娘。やはり姪より娘のほうが血の結びつきは強いのか。北海道からディープインパクトの高笑いが聞こえてくるような結末だった。