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遠藤保仁が、激動の1年を振り返る。
「今季はキャリアハイじゃない」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2014/12/17 10:30
遠藤保仁にとってJ1優勝は2度目、ナビスコ杯優勝は2度目、そして天皇杯優勝は3度目となった。来年はACL、代表でのアジア杯もある。遠藤のキャリアハイはいつ訪れるのだろうか。
「サッカーは、年齢ではないことを証明したい」
残るは天皇杯のみとなった時期に行なわれたJリーグアウォーズで、遠藤は11度目のベストイレブン、初のMVPにも輝いているた。
「サッカーは、年齢ではないことを証明したい」
受賞のスピーチで、そう言った。
年齢を重ねていくと、否応なくそのことがクローズアップされる。日本代表でも最年長としてとか、ロシアW杯は38歳で年齢的に難しいとか、「年齢」が最初にくることに遠藤は違和感を覚えていた。遠藤の発言は、いつも同じようなことを問われることに対しての答えであり、同時に自分自身や同世代に向けた叱咤激励でもあった。
今シーズン最後の試合となった天皇杯決勝は、J1昇格を決めて勢いにのる山形が相手だった。その勢いのままガンバを苦しめたが、遠藤たちは山形の攻撃を読んでいた。
「ハイプレスをかけてきて、押されるのもわかっていたんで、しっかり守り、ボールを奪ったらカウンターという意識が、みんなの中で意志統一されていた。貴史とパトリックが決めてくれたんで、ラクに試合を進めることができた。自分たちのサッカーはできなかったけど、勝つことに徹して勝てた」
この試合のガンバにはペースを握れない中、焦って前からボールを奪いに行き、かわされて失点を重ねた2年前の姿はなかった。ドッシリと落ち着いて戦う王者の貫禄が感じられた。その中心に遠藤がいた。
「今シーズンは、キャリアハイじゃない」
トリプルクラウンを達成後、遠藤はこう言って笑った。
「今シーズンは、キャリアハイじゃない。それは未来でしょ」
3冠を達成し、MVPを獲得し、アジアカップを戦う日本代表入りも果たした。2015年はアジアカップ連覇、そしてリーグ戦を始めすべてに連覇の可能性があり、ACLへの挑戦も待っている。ガンバをビッグクラブにする夢もある。あらゆることに貪欲で常に今以上を求めている遠藤にとって「キャリアハイ」など意味のないことなのだろう。その姿勢は、プロ入りしてから一貫している。
「とりあえず、ゆっくり休みたい」
遠藤の長い1年が終わった。その言葉には「満足はしていないが、いいシーズンだった」そんな充実感が滲んでいた。
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