濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
WBCムエタイ世界王座で快挙達成!
“緑のベルト”を日本人が巻く意義。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2014/11/24 10:40
大和哲也は1987年生まれの26歳。2010年にK-1の63kgトーナメントで優勝を果たし、早くから将来が嘱望されていた。
サゲッダーオvs.大和は緊張感が充満する展開に。
絶え間なく技が繰り出された梅野vs.ジョムピチットとは違い、ダブルメイン第2試合のサゲッダーオ・ペットパヤタイvs.大和哲也は少ない手数の中に緊張感が充満する展開になった。
両者は昨年5月、アメリカで対戦。大和が左ボディで優勢に試合を進めていたが、ヒジ打ちで逆転のTKO負けを喫している。2度目のタイトル挑戦、いわば背水の陣である大和がうかつに手を出せないのはもちろん、サゲッダーオも相手の実力を知っているだけに慎重になる。試合後の大和は言った。
「今日のサゲッダーオは本気でしたね。ガードを高く上げてたし、その隙間から見える顔が本当に怖かった」
大和「このベルトに選んでもらえたという気分」
それでも、一歩踏み込んだことが勝機を呼び込んだ。左ボディのクリーンヒットでチャンピオンを下がらせ、ヒジで口の中を切った直後にお返しの左ヒジ。鼻から出血したサゲッダーオに追い打ちの連打を浴びせると、レフェリーがドクターにチェックを要請する。そしてそのまま、試合が終わった。前回とは逆の結末、大和のTKO勝ちだ。
リング上で渾身のガッツポーズを決めた大和は、控室でも心底、満足げにベルトを見つめていた。
「やっと獲れた。このベルトに選んでもらえたという気分です。このままベルトを巻いて帰りたいくらいですよ」
それだけの重みが、この“緑のベルト”にはあるということだ。