濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
WBCムエタイ世界王座で快挙達成!
“緑のベルト”を日本人が巻く意義。
posted2014/11/24 10:40
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
11月15日、後楽園ホールで2つの快挙が成し遂げられた。
NJKF(ニュージャパンキックボクシング連盟)興行のダブルメインイベント。大和哲也がWBCムエタイ世界スーパーライト級、梅野源治が同・スーパーフェザー級のタイトルを獲得したのだ。WBCムエタイ世界王座を日本人が獲得したのは、これが初めてのこと。世界戦が日本で行なわれるのも史上初のことだった。
WBCムエタイとは、ボクシングでおなじみのWBC(世界ボクシング評議会)が2001年に設立したムエタイ=タイボクシング部門。大会パンフレットによれば、その目的は「タイの国技であるムエタイの伝統・技術を継承しつつ、競技スポーツとして確立することにより世界的な普及を図ること」である。
格闘技界世界最高のブランドである“緑のベルト”。
世界チャンピオンのベルトは、ボクシングのWBCと同様の“緑のベルト”。プロ格闘技界において最高のブランドだ。
キック、ムエタイの世界には統一機構がないため、世界中にベルトが存在する。重要なのは何のベルトかではなく、誰が巻いているか。それが常識だった。それらに比べても、WBCムエタイはネームバリューと権威が格段に違うと言っていいだろう。
ダブルメイン第1試合、元ラジャダムナンスタジアム・フェザー級王者ジョムピチット・チュワタナとの王座決定戦に臨んだ梅野源治は、序盤からローキックとパンチで的確にダメージを与えていった。ミドルキックの蹴り合いや首相撲でも一歩も退かない。
“打倒ムエタイ”においては、タイ人と同じスタイルで闘わないことが鉄則とされてきた。テクニックのしのぎ合いに付き合ったら、幼少期から修行を積み、キャリア100戦以上の選手も珍しくないタイ人には勝てない――。
だが、梅野はそんな常識を覆すことができる稀有な選手の一人だ。技術や駆け引きの巧拙、つまりタイ人の土俵でも互角以上に渡り合った上で、“倒す”武器も持っている。5Rの攻防が終わると、ジャッジは3人とも梅野を支持した。そのうちの一人の採点は50-45。すべてのラウンドを梅野優位と判断したのである。