プレミアリーグの時間BACK NUMBER
リバプールが目をそらす「現実」。
欧州制覇よりもリーグ4位死守を。
posted2014/11/16 10:40
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Tomoki Momozono
11月8日のリバプール戦を終えたジョゼ・モウリーニョには、アンフィールドでの闘いを終えたという実感が薄かったことだろう。
チェルシーの指揮官は、試合前日の会見でリバプールの「12人目」が持つ力の大きさに触れ、その影響力は「選手や監督以外にも及ぶ」と発言した。自身が未だに認めていないゴールの判定に敗れた、2004-2005シーズンCL準決勝でのアウェイゲームは、過去10年間で両軍間に生まれた因縁の一部に過ぎない。そしてモウリーニョは、忌々しい敵軍監督として、リバプールのサポーターに目の敵にされてきたはずだった。
ところが今回、アンフィールドの観衆が抱く怒り混じりの不満は、リバプールを率いるブレンダン・ロジャーズに向けられていた。ロジャーズは、敗戦(1-2)を告げる終了の笛が鳴る前から自軍サポーターに非難されていた。
その理由は、MF2名に交代を命じた70分の采配。1点を追う立場で、フィリペ・コウチーニョを下げてFWのファビオ・ボリーニを投入し、エムレ・カンをより攻撃的なジョー・アレンに代えた交代策は、決して間違っていたわけではない。しかし、プレーメイカーのコウチーニョを交代させたことをマイナスと判断したホーム陣営からは、監督への不信感を示すブーイングが起こった。
170億円を費やした補強の結果は?
ファンの苛立ちは分からなくもない。リバプールは、前節ニューカッスル戦(0-1)からの1週間で、CLでのレアル・マドリー戦(0-1)を含む3連敗。今季プレミアリーグでの黒星は早くも5つ目を数えた。昨季プレミア2位を獲得し、ファンが25年ぶりのリーグ優勝を期待するチームとしては、あってはならない事態だ。
ロジャーズによる「目標は4位以内」というチェルシー戦後のコメントは、アンフィールド界隈で「消極的」と受け取られた。たしかに、今夏の移籍市場に1億ポンド(約170億円)を超える資金を投じた事実を考えれば、淋しい発言だ。
だが、昨季と今季は違う。行なわれた補強は、ルイス・スアレスというワールドクラスの流出による戦力ダウンを、大量9名の獲得による総合力アップで補おうとする形になってしまった。その上、CBのデヤン・ロブレン、ボランチのカン、ウィンガーのアダム・ララーナ、センターFWのマリオ・バロテッリといった新戦力は、本領を発揮できないまま開幕4カ月目を迎えている。