プレミアリーグの時間BACK NUMBER
リバプールが目をそらす「現実」。
欧州制覇よりもリーグ4位死守を。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2014/11/16 10:40
ロジャーズ監督は1973年生まれの41歳。昇格直後のスウォンジーの指揮官として名を上げ、リバプールの監督に就いて3シーズン目を迎える。
セットプレー要注意人物のマークを怠り同点弾。
わずか5分でリードを帳消しにされた1点は、CKの流れから奪われた。ジエゴ・コスタの頭を経由してジョン・テリーがヘディングシュートを放ち、セーブ後のリバウンドにネマニャ・マティッチが反応した後でケーヒルが至近距離から蹴り込んでいる。ボールに触れた4名は、いずれもマークされているべきセットプレー時の要注意人物だ。
ジエゴ・コスタのゴールで逆転された67分の場面は、アシストをこなしたセサル・アスピリクエタにコウチーニョがあっさりと振り切られている。リバプールの右サイドからは、スコア上の形勢逆転を待つまでもなく、前半からエデン・アザールに切り込まれてもいた。
自軍もスターリングという突破力を左サイドに擁していたが、その威力は、執拗なプレッシングを得意とするラミレスをぶつけてきたモウリーニョ采配によって抑えられた。一方のロジャーズは、攻撃的なグレン・ジョンソンの手前に、守備が得意ではないコウチーニョという右サイドを選択した。
リバプールの右アウトサイドには、ベンチで試合を終えたララーナという守備もできる選択肢があった。同ポジションでボリーニを先発起用する手さえあっただろう。運動量が豊富でウィングでも使えるボリーニは、個人的には評価に値するパフォーマンスを披露したばかりだった。
ロジャーズ自身が、直前のレアル戦での布陣を「主力を温存したわけではない」と説明し、先発させた控え組のやる気を煽っていたことを考えれば尚更のことだ。やはり欧州の舞台で先発の機会を与えられたが、続くチェルシー戦ではベンチから漏れたハビエル・マンキージョにも同じ事が言える。アトレティコ・マドリーからレンタル移籍中の右SBは、今夏の加入以来、守備面ではジョンソンに勝る安定感を見せていたはずだ。
ファンも指揮官も、現実を直視するときだ。
ロジャーズが、チェルシー左サイドの突破力を警戒した人選を行なっていたとしても、攻撃の信念を曲げて守備的なスタメンを選んだと言われるようなレベルではなかった。肝心の攻撃面では、ダニエル・スタリッジが怪我で欠場中だったことを考えれば、むしろ賢明な判断と言われたかもしれない。結果的には、守れないチームが試合に敗れ、敗軍の将はファンの非難を浴びた。
11月23日の次節クリスタルパレス戦では、スタリッジが約2カ月半ぶりに戦線復帰を果たしているに違いない。しかし、昨季のプレミアで21ゴール7アシストの現エースが前線に戻っても、31得点を上げて12得点を演出した先代スアレスの穴が埋まるわけではなく、当然ながら失点数の減少に繋がるはずもない。
今季のリバプールでは、優勝候補を自負し続けるファンも、攻撃姿勢にこだわり続ける指揮官も、実質的な戦力アップと守備改善が見られない現実を直視して目を覚ますべきだ。