ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
男子ゴルフ界、30代の逆襲が始まる。
岩田寛、竹谷佳孝が“捨てた”モノ。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2014/11/12 10:40
今年のマスターズ覇者バッバ・ワトソンらと最後まで争い、HSBCチャンピオンズで3位となった岩田寛。目標の米ツアーが見えてきた。
「ダメっていうか、昨日と比べるのがダメ」
快進撃を支えたのはパッティングだったが、3日目のラウンド後「パターの調子は昨日と比べてどうでした?」と質問されると、岩田は「昨日に比べたら……ダメです」と言った直後に、こう訂正した。
「ダメですっていうか、昨日と比べるのがダメです。今日は今日で、良かったです」
ミスを引きずり、足をすくわれた経験が膨大にあるのだ。チャンスを逃し続けた理由といえば自滅ばかりだった。昨日の自分、ともすれば一打前の自分が、次のプレーにどう影響するかは分からない。
「僕は一打、一打、大切に。短気なんで、ずっと我慢することを今年ずっとやり続けてきた」
だから今回の結果がもたらすものについて問われても、軽々しく「自信になります」とは言わなかった。「手応えは今日に関してはあるけれど、コースが違えばまた違う。時が経って、ポジティブなものになるようにまた努力したい」と慎重だった。
12月には米国下部ツアーの最終予選会に挑戦する。米ツアーのQT受験はキャリアで3度目だ。周囲にどう受け取られようが、彼は昨日の自分にはこだわらず、頑として世界最高峰の舞台を目指すのだ。
HSBCに出場したもう1人の30代、竹谷佳孝。
プロゴルファーにとっての33歳という年齢は、「もう」なのか「まだ」なのか。捉え方は、それぞれである。
岩田同様、今年初優勝を挙げ、HSBCチャンピオンズに出場したのが34歳の竹谷佳孝だった。ジュニア、大学ゴルフ部出身の選手が多数を占めるツアープロの世界で、異色の経歴を持つ選手だ。
野球少年だった竹谷は、山口・宇部鴻城高校時代、故障によって甲子園への道が閉ざされた。キャプテンとして迎えた新チーム結成直後、2年生の夏だった。練習で遠投をしていた際、突然腰に激痛が走り、グラウンドに突っ伏した。脊椎分離症だった。