ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
男子ゴルフ界、30代の逆襲が始まる。
岩田寛、竹谷佳孝が“捨てた”モノ。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2014/11/12 10:40
今年のマスターズ覇者バッバ・ワトソンらと最後まで争い、HSBCチャンピオンズで3位となった岩田寛。目標の米ツアーが見えてきた。
ジャンボ尾崎も知らなかった高校時代。
ゴルフとの出会いは高校卒業間近。ジャンボ尾崎も知らないほど野球に打ち込んできたが、父に連れられゴルフ練習場に足を運んだ。
「スライスするんだけど、同じところにボールが落ちて。『筋がいいじゃないか』って言われて。絶対痛くなると思っていた腰も大丈夫だった」
進路を福岡のゴルフ専門学校に決めると、めきめきと実力をつけ在学中に国体に出場。2006年には日本プロ新人戦を制した。
今年6月、日本ツアー選手権を制して一気に5年シードを獲得。秋はトップ10入りが続き、賞金ランクもひと桁順位で11月を迎えた。だが彼は、2013年までは無名選手といえる存在だった。下部ツアーが主戦場で、昨年までにレギュラーツアーで稼いだ賞金額はわずか536万円である。
「僕は遠回りしても、積み上げていくタイプ」
そんな竹谷はここ2年、日本ゴルフツアー機構が主催する若手中心の短期合宿に足を運んできた。周りは20歳前後。目が希望ばかりに満ちた選手と一緒に汗を流した。
自分の年を考えて、気後れする部分もあったという。それでも、「恥をかこうが何をしようが、這いつくばってやれればいい」と竹谷は言う。
「いろんなタイプがある。石川遼くんみたいに一瞬の出来事からトントントンといくタイプもある。でも僕はバカだから。遠回りしても、そうやって積み上げていくタイプ。
ひとつひとつ経験して、階段をゆっくり上ってきた。このWGCでも、この成績(76選手中73位)で、もちろん恥ずかしい気持ちもある。でも仕方ない、きっと何か得るものがあると思うと、集中力も切れないんだ」
恥も外聞もなく、亀の足取りで歩んできた竹谷の矜持は「やり続けたこと。気持ちを切らさなかったこと」だという。「いろんなことをひっくるめて、この道は自分で決めたことだから」