青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
賞金王の歴史を背負って戦う!
石川遼が語った今年の目標とは。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2010/01/11 08:00
マスターズ・トーナメントへの招待状を持つ石川。世界ランキングも堂々の30位なので、実力で勝ち取った初めての招待となる
驚きと興奮に満ちた1年が終わり、石川遼の新しい1年が始まった。
2010年のシーズンを戦っていく上で石川が避けては通れないものが1つある。それは2009年日本ツアー賞金王という肩書きである。
12月の日本シリーズJTカップで賞金王を決めた直後、その胸中には喜びと同じくらいの戸惑いを感じていた。
「僕にとっては、賞金王おめでとうと言われても、『ありがとうございます』よりも『すみません』『申し訳ないです』という言葉が出ちゃいそうなくらいで、自分の技術とか精神力に釣り合わない良い結果が出てしまったと思ってたんです」
「賞金王だけは自覚をもってやっていかなくちゃいけない」
しかし、約1カ月の時間とともに考え方は徐々に変化し、今では賞金王に対する自分なりのスタンスを見つけ、心構えも明確になった。
「初めは謙遜してばかりだったけど、賞金王だけは自覚をもってやっていかなくちゃいけないと思うようになった。何人もの名選手が築いてきた歴史なんで、謙遜して無視してちゃいけないんだと」
こんなスイングじゃダメだ、こんなショットじゃ通用しないと、自らの技量に対する評価はいくら厳しくしてもいい。それは個人の満足度の問題だからだ。ただし、賞金王は国内だけでなく世界中の選手やファンからも日本ツアーの看板選手として見られる大切なポジション。
石川は謙遜することをやめ、その責任を引き受けたのである。
「たくさんの人が去年の賞金王だと思って僕のプレーを見てくれると思う。すべてのショットがそれに釣り合うかは分からないけど、少なくともがっかりさせちゃうようなゴルフは見せたくない気持ちはあります」
もちろん不安はつきまとう。
そして、それは海外に出た時により大きなものとなる。
日本の試合であれば、たとえ散々なプレーをした日があっても、これまでの実績を知るファンは寛容な視線を向けてくれるだろう。ただし、石川をよく知らない海外のファンが期待はずれのプレーを目の当たりにしたら、「あぁ、こんなもんか。なんでコイツが賞金王になれるんだ?」と日本ツアーのレベルそのものを疑問視するようになるかもしれない。