テニスPRESSBACK NUMBER
錦織圭、過去3戦全敗のマリーに完勝。
「違う自分になったと思い込んだ」
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2014/11/10 11:15
初体験のツアーファイナル、大会の開幕戦となる独特の雰囲気、そして幻想的な演出。それでも錦織圭のテニスが揺らぐことはなかった。
マリーのセカンドサーブを果敢に攻める展開。
しかし、互いに一度ずつサービスゲームを落として迎えた3-3あたりから、錦織の展開が積極的になった。マリーのバックハンドを徹底的に攻め、甘くなった返球を仕留める。鋭さを欠く相手のセカンドサーブを上からたたく。5-4で迎えた相手のサービスゲームで2度目のブレークを成功させ、第1セットを先取した。
第2セットは4-2のリードを守れず追いつかれたが、気落ちせず踏み止まって、第1セット同様、5-4から相手のサービスゲームをブレークした。相手のセカンドサーブを積極的に攻め立てる、この試合の錦織を象徴するようなゲームだった。
「最初はサーブがまったく入らず苦しんだが、第1セットの後半はサーブもよくなり、すぐにブレークバックもできた。グラウンドストロークの調子がよかったので、自分から攻めていけた」
錦織は、冷静に難敵からの初勝利を振り返った。
「違う選手になったと自分で思い込んでやっていた」
マリーはセカンドサーブ時のポイント獲得率が27%、バックハンドのミスも多く、終始、調子が上がらなかった。とはいえ、以前の錦織ならのらりくらりとした相手の試合運びに「ハマってしまう」可能性もあっただろう。それが四大大会の優勝経験もある選手の怖さだ。しかし今の錦織には、勝つべき相手に確実に勝つ強さがある。
試合後の会見で錦織は「まだ勝っていない相手なので、苦手意識はあった」と打ち明けた。そして、すぐにこう続けた。
「今年は違う選手になったと、自分で思いこんでやっていました」
敗れたマリーの言葉が、この1年の錦織の進化を裏書きする。
「(これまでの対戦時と)テクニックに大きな違いはないが、自信を持ってプレーしている。だから、より多くのチャンスをつかむことができるし、以前より少し攻撃的にできている」
調子の上がらないマリーからの初勝利は、必然だったとも言える。より堅固になった自信を携え、錦織はラウンドロビンの残り2試合に挑む。準決勝進出が、より現実的な目標として、見えてきた。