プロ野球亭日乗BACK NUMBER
広島・野村監督が最後に貫いたもの。
1番菊池、2番丸という「理想」の打順。
posted2014/10/14 11:20
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
勝負のカギは、戦う前にあったような気がする。
クライマックスシリーズ(CS)第1ステージが始まる3日前の10月8日。広島・野村謙二郎監督の辞任が発表された。すでに退任の決まっている監督が指揮する短期決戦。それが勝負にどんな影響を及ぼすのか、が勝負の一つのポイントになったシリーズである。
「監督に花道を!」
選手の心にはもちろんそんな思いがあったはずで、それが広島のエナジーとなる可能性はあった。と、同時に辞める監督の心の中はどうだっただろうか……。
「有終の美を飾りたい」という思いとともに、「最後は自分の理想の野球で締めくくりたい」という思いもあったはずである。
野村監督は'09年オフに、12年連続Bクラスに沈んでいたチームを引き受けた。そこから新たなチーム作りを掲げて若手を登用し、昨年、球団史上初のCS進出を果たすばかりか、2位の阪神を破ってファイナルステージまで駒を進めた。
シーズンでは使わなかった超攻撃的なオーダー。
今季は、エースの前田健太投手を軸にルーキーの大瀬良大地投手も加入して先発投手が揃ったことで、逆にこの監督の持ち味である攻撃野球が花開いた。
菊池涼介内野手が3割2分5厘を打って、阪神のM・マートン外野手に続く打率ベスト10の2位に躍進。丸佳浩外野手も3割1分をマークして打線の軸となった。中盤の絶不調はあったが本塁打王のB・エルドレッド内野手が加わり、後半戦からK・キラ内野手に替えて抜擢したR・ロサリオ外野手も、規定打席に満たないながら3割3分6厘の14本塁打と活躍した。
この中軸に、若手の鈴木誠也内野手や堂林翔太内野手、田中広輔内野手、會澤翼捕手らをうまく絡めた攻撃野球が、野村監督の理想とするチームの姿だったはずである。
このファクターが、辞任の決まったCSの采配にどう影響するのか。それが端的に表れたのが、「1番・菊池、2番・丸」という超攻撃型のオーダーだったのである。
実は今季はこの1、2番の並びはレギュラーシーズンではほとんど使われていなかった。開幕は「1番・丸、2番・菊池」でスタートしたが、その後、様々な試行錯誤を繰り返しながら、たどり着いた結論が「2番・菊池、3番・丸」という並びだったはずである。