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広島・野村監督が最後に貫いたもの。
1番菊池、2番丸という「理想」の打順。  

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/10/14 11:20

広島・野村監督が最後に貫いたもの。1番菊池、2番丸という「理想」の打順。 <Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

広島を2年連続でAクラス入りさせた野村謙二郎監督。軍隊式の練習も影を潜め、若い選手が伸び伸びと力を発揮する環境を整えたのも功績の1つだ。

最後の最後に、2人の打順を繰り上げた理由。

 バント。右打ち、エンドラン……もともとポイントが近く、打撃の幅が広い菊池は2番に固定されチーム打撃を意識することで、逆にバッティングの確率も上がった。それが今季の成績につながった部分も大きいだろう。

 一方の丸も、天才肌の打撃センスの持ち主である。こちらは積極的に振っていくことで、天性のミート感覚が花開いて、ポイントゲッターとして今季は3番で127試合に起用されている。

 結果的には「2番・菊池、3番・丸」とこの二人は今季も連結されて、それが広島の得点の原動力となり、これが広島のオーダーだったはずである。

 ところが野村監督は、最後の最後でこの二人の打順を1つずつ繰り上げ、1番と2番に起用した。

 確率の高い打者から並べて得点力を挙げていくというのは、短期決戦の緊急用兵としては一つの方策である。

 そして指揮官は、最後までこの二人への理想は捨てようとはしなかった。

ほぼ全員がバントを選択する場面で、サインは「強攻」。

 象徴的な場面は、後のない第2戦の延長11回の采配だった。

 この回先頭の菊池が今CS9打席目にして初ヒットとなる右前安打を放った。

 ここで2番の丸に出されたサインは、強攻だったのである。

 1番・菊池、2番・丸というオーダーを組んだ時点で、野村監督の胸の中にはこのコンビではバントを排除した攻撃パターンが描かれていたはずである。打って出ても丸は左打者で足も遅くはない。強い打球が野手の正面を突かない限り併殺になる確率は低いし、それが2番に強打者を置く際のセオリーであるのは言うまでもない。

 ただ、である。

 状況は、引き分けでも敗退と後がない。しかも試合は延長に入った1点勝負で、残された攻撃はこの回と12回の2回しかないのである。おそらく10人いたら9.5人は送りバントを選択する場面だったが、指揮官はそうはしなかった。

 実は野村監督が丸に最後に送りバントのサインを出したのは、昨年4月16日のDeNA戦で、その後は1年以上にわたってサインを出していないのである。

 3番に据えた丸には、ずっとそういう野球をやらせてきたし、それが指揮官の理想だった。

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