プレミアリーグの時間BACK NUMBER
サウサンプトンが降格候補から躍進。
クーマンの「夢」は実現するか。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2014/10/04 11:00
現役時代はバルセロナで活躍し、指揮官としてはフェイエノールトを復活させたクーマン。
ポチェッティーノが作り上げた基礎に、クーマンの手腕。
ホームで快勝(4-0)を収めた第4節ニューカッスル戦などは、「集団」対「個人の寄せ集め」といった印象を与える見事なチームパフォーマンスだった。
敵は、GKがクリアを誤って自殺点を招きかけるなど、意思の疎通を欠く状態。これに対してサウサンプトンは、新センターFWのグラツィアーノ・ペッレが中盤まで下がってポゼッション維持にも協力していたように、連帯感のある攻撃で主導権を握り続けた。最終的には、センターハーフのモルガン・シュネイデルランと左MFのジャック・コークもスコアシートに名を連ねている。
この集団としての連動性に関しては、ポチェッティーノ前監督の功績もある。指揮を執った1年4カ月間で、サウサンプトンはプレッシングとポゼッションという2大原則を植え付けられた。チームには明確な方針が出来上がっていただけに、クラブにすれば、後任監督の候補は絞りやすかったはずだ。実際に白羽の矢を立てたロナルド・クーマンは、ポチェッティーノと同様、果敢に奪ったボールをパスで繋ぐスタイルを志向する指揮官だ。
急いで獲得した新戦力が、ことごとくフィット。
そしてその新監督は、非常事態の収拾役としても適任だった。常に冷静なクーマンは、就任と同時に主力の離脱が相次いでも慌てず、的確に穴埋めを行っている。
祖国オランダのフェイエノールトから呼び寄せたペッレは6試合で4得点。第6節QPR戦(2-1)では、今季のベストゴール候補と言われるオーバーヘッドで勝ち越し点も決めた。新チャンスメイカーのデュサン・タディッチは、早くもファンの間で「チャンスの陰にタディッチあり」と言われ、6試合3アシストという数字以上のインパクトを見せている。
ジョゼ・フォンテとCBコンビを組む相棒としては、9月1日にアトレティコ・マドリーからレンタルで移籍したトビー・アルデルバイレルトが、集中力の点で吉田麻也を上回る新たな安定の源となりそうだ。
新左SBのライアン・バートランドもレンタルだが、チェルシーでCL優勝も経験済みの25歳。攻撃参加の躍動感では前任のショーに劣るとしても、ポチェッティーノほどはラインを押し上げず、後方から大事に組み立てるサッカーを好むクーマンにとっては、攻守に計算できる駒だと言える。
セルティックから獲得したフレイザー・フォースターは、巨漢にしてシュートへの反応が俊敏。過去2年間、絶対的なナンバー1が存在しなかったチーム待望の新守護神となれる26歳だ。