オリンピックへの道BACK NUMBER
全てを可能にする圧倒的な自信。
体操・白井健三が追う内村の背中。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2014/10/02 16:30
白井健三は「試合で緊張したことはない」という強心臓。東京五輪を23歳といういい時期で迎える若者は、内村航平とは異なる道を歩んで世界の頂点を目指している。
靭帯損傷、骨挫傷が完治しないまま強行出場。
だがその後、順調だった白井のキャリアはにわかに暗転する。
6月中旬、右足首外側の靭帯を損傷し、内側は骨挫傷で全治6週間の怪我を負ったのだ。練習などできるわけもない。今年10月に中国・南寧で行なわれる世界選手権代表の最後の選考会である7月の全日本種目別選手権出場も厳しい状況に追い込まれ、代表入りも厳しいと思われた。
それでも、「骨が折れててもやりたい」と所属クラブの代表である父に宣言し、強行出場する。
大会では、ゆかで優勝をもぎ取って2年連続での代表入りを決めた。得点も16.100点。危機の中で乗りきれた原動力は何だったのだろうか。
「大切なのは自分を信じてあげることだと思う」
この大会の前、白井は抱負をこう口にしている。
「自分を信じて演技したいです」
9月には、昨年の世界選手権において、17歳1カ月の史上最年少でゆかの金メダルを獲得したこと、「後方伸身宙返り4回ひねり」を決勝で初めて成功させたことの2つについて、ギネス世界記録に認定された。
それに対して、白井が出したコメントがある。
「『世界一』になれたのは得意なことを追求した結果。大切なのは自分を信じてあげることだと思う」
自分を信じる――白井は、そう考えてきた。乗り越えることができたのは、怪我に対して「できない」と思わなかったこと。そして、ただ口にするだけでなく、ほんとうに信じきることができたからこそではなかったか。