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新2トップ、「毒蛇」、スポンサー。
コンテがアズーリに施す“荒療治”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/09/18 16:30
ノルウェー戦を勝利で飾り、ユーロ2016予選ではグループHの首位にたっている。
バロテッリ非招集で、健全な競争と緊張感が。
飛行機嫌いを克服してA代表デビューを果たしたザザは、先制点を挙げたノルウェー戦の後、「コンテの指導は確かにきついけど、チームとしてプレーすることを考えれば走るのは当然。やりがいがある」と強調した。
前代表監督プランデッリの根底にあった性善説に基づく寛容さは、悪童FWバロテッリの増長を止めることはできなかった。選手間の意識の溝は深く、内部分裂を起こしたチームが勝てるほどW杯は甘くなかった。
規律と献身を重んじる闘将は「私の選考では、プレーヤーとしての才能より人間性の方を重視する」と断言。代表監督としての所信表明ともいえる今回の連戦に、コンテはバロテッリを招集せず、プランデッリの保護下でエース待遇が約束されていた問題児を擁護する代表選手も皆無だ。
イタリア代表のロッカールームに、健全なチーム内競争と緊張感が戻ってきた。
ピルロが「毒蛇」に喩えたコンテの執念深さ。
協会にとっても、カルチョの賢者ピルロに「毒蛇のようだ」と喩えられた執念深い闘将を飼い慣らそうとすれば、一筋縄でいくはずがない。
コンテは、もともとサッカー協会と反目することが多かったユベントスの元指揮官。代表監督就任にあたっても、夏の間にひと悶着あった。
8月の会長選で当選したタベッキオ新会長が、就任後すぐに代表再生の切り札としてコンテへ監督職をオファーした際、コンテはユベントス時代とほぼ同等の手取り年俸365万ユーロを要求した。前任者プランデッリよりやや少ない160万ユーロでの契約を見込んでいた協会側は仰天した。
コンテは、ほんの4カ月前にスクデット3連覇と歴代最多勝ち点記録という歴史的偉業を達成したばかりの国内随一の名将である。実績の点でいえば、プランデッリよりはるかに優れるコンテの要求は、プロフェッショナルとして真っ当なものだ。
見通しの甘さに青ざめた協会は、代表スポンサーであるプーマやフィアットへ泣きつき、差額分の年俸負担を承諾してもらうと、何とか無事契約書へのサインにこぎつけた。
すると、今度は“選手選考にスポンサーが口出しするのでは?”という世論が沸き起こった。「公正な競争を欠く恐れがある」と消費者団体が協会へ申し知れを行ったほどだ。
結局、就任会見に臨んだコンテが「何も、何者も、私の選考に口出しはさせない。私のこれまでの指導歴を見てもらえば明白だ」とピシャリ、雑音を断った。