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<独占インタビュー再録> 錦織圭 「壁は必ず打ち抜ける」
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byTetsushi Ogawa
posted2014/09/08 17:00
BIG4は「決して勝てない相手ではない」。
ナダル、ジョコビッチ、そしてアンディ・マリーとロジャー・フェデラー、このBIG4には通算2勝10敗の成績が残っている。10敗のうち5敗がナダルに喫したもの。'13年の全仏でも、ぐうの音も出ない完敗を味わわされた。試合後、錦織は「集中力と大事な局面でのタフさが足りない。気持ちの面で粉砕されてしまった感じが大きい」と振り返った。どれだけ攻めても、持てるすべてを出し尽くしても、ナダルはびくともしなかった。
一方で、憧れの選手であったフェデラーには初めて勝った。
「めちゃくちゃうれしかったですね。僕にとってはほぼ『神』というか、さわれないくらい遠い存在だったので、その選手に勝てたっていうのは成長できているんだなと思えたので」
もちろん、一度勝ったからといって実力で追いついたとは思っていない。自信を喪失したり、小さな手応えを得たり、6年間のプロ生活はその繰り返しだった。その認識の上で、BIG4は「決して勝てない相手ではない」と錦織は言う。
「彼らと対戦するときは、大変な我慢とすごい量の集中力もいると思いますけど、決して勝てない相手ではないと感じています。まあ、全仏のナダルは衝撃的ではあったんですけど……。そこまで来ているなとは感じているので。もう少しだなと思います」
「マリーに勝つことによって変われる気がする」
BIG4あるいはトップ10の中に特定のターゲットは存在するのだろうか。
「やっぱり今まで勝っていない何人かですね。マリー、(フアンマルティン・)デルポトロ……。ナダルはちょっと置いといて(笑)。ま、言えばみんななんですけど、特にというと、勝っていない彼らですね。二人には1セットも取っていないと思う。だれを崩してみたいかと言われれば、マリーが一番だと思います。やっていると、ハマっちゃうんですよ、彼のプレーが。コントロールされてるような気がしてしまうので。でも、彼に勝つことによって、何か変われるような気がする」
具体的な攻略の糸口は見えてきたかと尋ねると、「ま、どうですかね。難しいですけど」と苦笑で逃げられた。
それでも、最低限のやるべきことはわかっているはずだ。対マリーに限ったことではなく、切り札はやはりフォアハンド、そして、より積極的な戦い方だろう。マイケル・チャンの指導に委ねる部分もあると見られるが、錦織自身にも2014年バージョンの攻撃的なテニスがイメージできているようだ。
「思い当たるのは、全豪やマイアミでのフェレール戦とかパリ室内のガスケ戦ですね。もうちょっと自分から仕掛けていったら何か変わったんじゃないかなと感じられた試合だったので。もっとフォアを使ったり、ネットに出たり、バックのストレートだったり、自分から仕掛けることも覚えられたら、(上位を倒す)チャンスは増えてくると思います」
全豪のフェレール戦は十分に攻撃的なプレーだったが、錦織は「まだ安全パイを選んでしまうところがあったと思うので、そこが直せれば」と自分を戒める。あれが安全パイなら、'14年にはどれだけ攻撃的なプレーを見せてくれるのか、想像するだけで楽しくなる。