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<独占インタビュー再録> 錦織圭 「壁は必ず打ち抜ける」
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byTetsushi Ogawa
posted2014/09/08 17:00
'13年のトップ10選手との対戦成績は……。
ただ、目をそらしてはならない事実もある。2勝7敗。'13年のトップ10選手との対戦成績だ。勝率に直せば2割2分2厘。本人にとっても不満の残る数字だろう。
「前の年(3勝5敗)の方が勝率はよかった。そこですね。トップ10の選手にどれだけ勝てるかっていうのが課題です」
1年前のNumberのインタビューで錦織はこう話している。
「トップ10の選手に勝てない選手なんて、トップを狙えない、狙う能力というかセンスというか、そういうものがないんだと思っている。あくまでも自分の意見ですけど」
これも錦織ならではの発想と言える。トップ10入りだけを考えるなら、直接対決の結果がすべてではない。実際、トップ10との直接対決で大きく負け越しても、下位ランカーに盤石なら10位以内に定着できる。そういう選手が何人もいる。しかし、彼の哲学は明らかに別の行き方を指し示している。
1年間でトップ10は1人しか替わっていないという事実。
「('13年の最終ランキングで)トップ20は前の年から5人入れ替わっているんですけど、トップ10は1人しか替わってないらしいんです。それが今の上位の層の厚さで、そう簡単に入れ替われるものではないので、ということは、自分は彼らに勝ってこそトップ10に入れるということなのかなと。彼らより実力が上でなければトップ10には行けないし、直接対決でも勝っていないと入れないのは当たり前。もっともっと実力をつけないと入れないですね」
直接対決で勝つ。それには実力をつけること。極めて単純な哲学だ。狙って果たせなかったトップ10入り。10位という数字の重さと2勝7敗の結果が目の前に突きつけられている。だが、その困難さを十分承知の上で、錦織は一人一人蹴落としていくしかないと覚悟を決めている。
そもそも、究極の目標はトップ10ではない。男子テニスの頂点、世界ランク1位だ。彼の今の位置から、1位はどう見えているのか。
「誰しも(1位は)夢だと思うのですが、(上位)選手を見てみると、すごく大変なことだとは思います。ノバク・ジョコビッチとラファエル・ナダルの(5時間53分かかって決着した)'12年の全豪決勝とか、同じ人間とは思えないような戦いがあったり、ただただ感心する場面も多くあります。でも、彼らに勝っていくことも楽しさというかモチベーションの一つなので、いつかは勝ってみたい」