スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
9月の直線と再生工場。
~マリナーズ、PO進出なるか~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2014/08/30 10:40
メジャートップの防御率を誇るマリナーズ投手陣の中心として活躍する岩隈久志。与四球の少なさは特筆に価する。
WHIPが0点台の2大エース、ヘルナンデスと岩隈。
なかでも眼を惹くのは、被打率の歴史的な低さだ。過去数十年のデータを振り返ってみても、今季のマリナーズに肩を並べられるのは、'75年のドジャース(2割2分5厘)と'86年のアストロズ(2割2分5厘)と2012年のレイズ(2割2分8厘)ぐらいしかいない。
では、マリナーズ投手陣の内訳を見てみよう。先発陣には「球界最高の右腕」フェリックス・ヘルナンデスを筆頭に、岩隈久志、クリス・ヤング、ロエニス・エリアス、ジェームス・パクストンが並ぶ。
ヘルナンデスと岩隈は、どちらもWHIPが0点台だ。ヘルナンデスは被打率が低く(1割9分6厘)、岩隈は与四球が少ない(149回3分の1を投げてわずか13個)。
ベテランに新人、そして復活の先発投手たち。
彼らの好投は想定内だったが、35歳のヤングやキューバ出身の新人エリアス(26歳)の健闘は意外だった。10年ほど前、レンジャーズやパドレスでまずまずの活躍を見せたヤングは、いまや直球の最高速度が140km以下で、すでに終わったと思われていた投手だ。一方のエリアスは、試合の途中で投球モーションを変えて自滅する悪癖を矯正されて成長した。ムラはあるが、6月には強打のタイガースを完封して(マリナーズの新人が完封したのは'99年のフレディ・ガルシア以来)周囲をあっといわせている。
そしてもうひとり、エリアスと同い年のパクストンが背筋痛から復活し、先発5番手の地位を固めつつある。この人は、ケンタッキー大学在学中から評価の高かった投手だ。昨年が3勝0敗、防御率1.50、今年が4勝1敗、防御率1.83。プレーオフを勝ち進むようなことがあれば、第3の先発として脚光を浴びる場面があるかもしれない。
だが、もっと面白いのはブルペンだ。抑えのフェルナンド・ロドニー(37歳)はヴェテランの域に達したが、このチームには、45試合以上に登板した中継ぎが6人もいる。ダニー・ファークアー(27歳)、チャーリー・ファーブッシュ(28歳)、ヨエビス・メディーナ(26歳)、ドミニク・レオーン(22歳)、トム・ウィルヘルムセン(30歳)、ジョー・バイメル(37歳)。