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横田真一はゴルファー兼大学院生!?
「選手の賞味期限」とセカンドキャリア。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT

posted2014/07/24 10:30

横田真一はゴルファー兼大学院生!?「選手の賞味期限」とセカンドキャリア。<Number Web> photograph by Yusuke Nakanishi/AFLO SPORT

2010年のキヤノンオープンで13年19日ぶりにツアー2勝目を達成。今年は2試合に出場、最高位はつるやオープンの26位タイ。

家族はゴルフに専念して欲しいというが……。

 横田は、'10年秋のキヤノンオープンで13年ぶりの優勝を飾った。石川遼、谷原秀人との最終日最終組を制して手にした2勝目は、そのメソッドを駆使した結果だったという。

 そして'11年。彼は、ツアープロとしての実益の範囲を超え、ついには医学研究科の研究生になった。2年後の大学院受験を志し、39歳にして人生で初めて英語の家庭教師を付けた。'13年に晴れて試験に合格、今は大学院生だ。

 研究生として過ごした間、横田はプロゴルファーよりも“先生”としての評判を高めていった。iPhoneのスケジュール帳は試合の予定以上に、授業の時間割で埋まり、オフにはプロ野球・広島カープのキャンプに講師として招かれたこともある。

 ただそうして学問にのめり込んでいった横田を、周囲は大歓迎しているわけではない。

「家族は『パパにはまだゴルフをやってほしい』って思っているみたい。『2足のわらじを履いてないで』って言われたり……」。4スタンス理論の恩師、廣戸も「真面目すぎるくらい真面目。練習の時間を削って勉強している。本当ならば、これをもっと自分のプレーに活かしてほしいところなんです」と真剣な顔つきで言う。

「僕のスポーツ選手としての賞味期限は切れている」

 しかし横田は、このセカンドキャリアを歩み出す覚悟を、とっくの昔に決めていた。自分のプロゴルファーとしての能力に、早々に見切りを付けていたのである。

「家族には『考えてみてくれ』と言うんですよ。2007年から、レギュラーツアーでトップ10に入ったのは、'08年に1回と、キヤノンの優勝の2回だけ。2006年で、僕のスポーツ選手としての賞味期限は切れている」

 自分の決断以外での引退は無いプロゴルフ界だが、横田は自らの実績を誰よりも厳しく客観視していた。

 華やかなツアーの第一線と距離を置き、新しい道を切り開いた横田。「いまはゴルフ界に恩返しをしたい、という気持ちだけで勉強している」という。

【次ページ】 新たな「中年の星」のあり方を。

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