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歴史的敗戦をセレソンはどう語ったか。
茫然、無言、饒舌……それぞれの傷。 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byGetty Images

posted2014/07/09 12:05

歴史的敗戦をセレソンはどう語ったか。茫然、無言、饒舌……それぞれの傷。<Number Web> photograph by Getty Images

試合後、重い足取りで帰ってくるダビド・ルイスを迎えたチアゴ・シウバ。目は腫れ、心なしか2人の姿が小さく見える。王国ブラジルは準決勝で敗れ、3位決定戦に回ることになった。

すべてを受け止める、世界で最も不幸なゴールキーパー。

 入り口にひとだかりができた。

 90分間で7度もネットを揺らされた、世界で最も不幸なゴールキーパーが口を開いていた。

「失点のあと、なぜかチームはバランスを失って……。あの8分間。あれがすべてだ。7失点で負けるってのは、普通じゃない」

 屈辱を味わった。目には今も涙が浮かんでいる。しかし彼はブラジルの将来すら見ていた。

「僕は9月に35歳になる。次のワールドカップは難しいだろう。しかしこのチームは若い。若手たちは初めてのワールドカップで、準決勝で7失点という経験をしたんだ。これを糧に、4年後にむけて進んでいってほしい」

 彼はミックスゾーンで最も長く話した選手だった。時には笑みさえも浮かべていた。あまりの衝撃に言葉を失っていた若手と、すべてを受け止めるベテランGKの姿が印象的だった。

「国民は2位や3位には興味がないだろうけど……」

 主将のチアゴ・シウバは長い通路の途中、一度だけ止まり質問に答えた。自らは出場停止でプレーすることができなかった。なんとも言えない悔しさがあったはずだ。

「キャリアの中でこんなことは経験したことがない。説明できないんだ。なぜこうなったのか、できれば説明したいんだけれど……。自分が出ていたらこんなことにはならなかった? そんなことは分からない。もしかしたら8、9失点していたかもしれない。6分で4点。確かに自分がいたら、失点後にチームを落ち着かせることができたかもしれないが。

 今日は眠れないだろう。国民は2位や3位には興味がないだろうけど、少なくとも3位になれるように努力したい」

 世紀の大敗の直後、ネイマールを除く22人の選手たちに見たのは、なぜこんなことになったのか理解できないという、それぞれの混乱だった。

「説明できない」という言葉を、何人の口から聞いたことだろう。彼らはこれからしばらくの間、この惨劇の理由を自問し続けるはずだ。

【次ページ】 自国開催の2014年W杯は、失敗として語り継がれる。

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