ブラジルW杯通信BACK NUMBER
歴史的敗戦をセレソンはどう語ったか。
茫然、無言、饒舌……それぞれの傷。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2014/07/09 12:05
試合後、重い足取りで帰ってくるダビド・ルイスを迎えたチアゴ・シウバ。目は腫れ、心なしか2人の姿が小さく見える。王国ブラジルは準決勝で敗れ、3位決定戦に回ることになった。
「この敗戦は、僕らの生涯にずっとついてまわるだろう」
はじめにダニエウ・アウベスが現れた。見たことのない悲しげな面持ちだ。いつもの数倍低いトーンで話している。
「責任は僕らにある。まったく反撃できなかったんだ……」
その後ろを、背筋をぴんと伸ばしたノイアーが通り過ぎていく。表情は対照的だった。
やがてブラジル代表一同が、ずらりと並んで一斉に現れた。
緑のリュックを背負ったダンテの髪の毛がしょんぼりと小さく見える。ルイス・グスタボは“フォルサ・ネイマール”とかかれた白いキャップをかぶり、もうしわけなさそうに眉毛を下げた。
マルセロ、フッキ、ベルナールにフレッジが続く。
今大会のブラジル代表で、最も批判されたのはフレッジだった。
この試合でも、スタジアム全体が試合中にブーイングを浴びせたくらいだ。うちひしがれた表情で、彼は少しだけ口を開いた。
「人生で最悪の試合をしてしまった。この敗戦は、僕らの生涯にずっとついてまわるだろう」
自国サポーターから浴びせられた強烈なブーイングは、彼の耳の奥から消えることはない。
「信じられないことって、本当に起こるものなんだな」
人生最悪の試合だったというのは、フレッジだけではない。失点に繋がるミスをしたフェルナンジーニョは、呆然としたまま受け応えしていた。
「人生でこんなことは経験したことがない……。うん、初めてだ。言葉すらない。いったい何が悪かったのか、それすら分からないんだ。試合前の雰囲気はいつもと同じだったんだけど……。信じられないことって、本当に起こるものなんだな」
ミスをした自覚もあったのだろう。目はうつろで、通路をとぼとぼと歩いていく。ミスの場面が頭から離れないのかもしれない。