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「信じられないくらいコンパクト」
前半で勝負を決めたドイツの“満足”。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2014/06/17 12:20
グループ最大の難敵ポルトガルを相手に、快勝で最高のスタートを切ったドイツ。南米の二強に注目が集まっているが、そういう時にこそゲルマン魂は発揮される。
「我々は信じられないくらいコンパクトだった」
しかしドイツには、いくらかの不安要素もあった。欧州での調整の最終段階のアルメニア戦で、好調だった攻撃的MFロイスが負傷離脱。現地入りしてからもボランチのベテラン、シュバインシュタイガーがヘリコプターで病院に緊急搬送された(ドイツサッカー協会は定期検診の一環と主張している)。頼みのGKノイアーも国内での親善試合を経ずに現地入りしている。
それがふたをあけてみればポルトガル相手に4-0の圧勝劇だった。ドイツサッカー協会は「夢のようなスタートを切った」とオフィシャルサイトで表現した。
レーブ監督は言う。
「我々は信じられないくらいコンパクトに戦い、相手にカウンターアタックを許さなかった。そして、素早い攻撃を繰り返した」
口に出して満足とは言わないが、ニュアンスにはにじみ出ていた。
ポルトガルの隙につけこみ、前半終了時点で3-0。
布陣は互いに4-3-3だが、ロナウドの圧倒的な個の能力を攻撃の中心と考えるポルトガルに対し、ドイツはサイドがだめなら中からと自在な攻撃を繰り広げる、全く異なるスタイルが持ち味だ。
立ち上がりは、ポルトガルがペースをつかんだかに見えた。左のロナウドに加え右からもナニのドリブルで攻め込み、サイドからの攻撃でチャンスを作った。8分にはロナウドがシュートを放つ絶好機もあった。早い時間帯はポルトガルのスピードがドイツを圧倒していたのだ。だが先制点は12分、ドイツに転がりこむ。ゲッツェのドリブルから得たPKをミュラーが決め先制。これでドイツが落ち着きを取り戻し、以降ペースを握ることとなった。
しかも、ポルトガルには逆風が続く。1トップのH・アウメイダが28分に負傷交代。その直後の32分には右CKからドイツのCBフンメルスが頭で合わせて2-0。そして、37分にはそれまでも小競り合いを繰り返していた、ミュラーとペペがついに本格的に衝突する。
ぺぺがミュラーとフィジカルコンタクトした後、倒れたミュラーに頭突きをしたことで一発退場の判定を受ける。所属のレアル・マドリーでも日頃からラフプレーの多い事で知られるペペだが、この大一番でのファウルはチームの大きな痛手となった。前半ロスタイムには人数の足りないポルトガルをドイツが押し込み、ディフェンダーのクリアをミュラーが押し込んで3-0とした。