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ウリエが語るW杯の戦術的トレンド。
2人のストライカーと、「暑さ」が鍵?
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byShuichi Tamura
posted2014/06/18 16:30
フランス代表、リバプールなどの監督を歴任し、リヨンではリーグ・アン2連覇も達成したジェラール・ウリエ。
FIFAがW杯で作る「戦術レポート」。
――それではワールドカップは……。
「だからFIFAは、大きな大会には必ずテクニカル・スタディ・グループを派遣して、それぞれの試合をふたりのメンバーが視察してレポートを作成するようにしている。そしてFIFAは、大会の統計資料を作成するのはもちろんだが、同時に戦術レポートをまとめた冊子とゴール集のビデオを制作している。それは各国の協会にとって、とてもいい資料になっている」
――つまりその点でも固有の価値があると。
「その通りで、試合の数も予選を含めると世界中で850試合以上になる。その850試合から、本大会に出場する32チームが選ばれるわけだ」
ブラジルの「暑さ」はサッカーの質を決定的に変える。
――それではあなたは、南アフリカ大会から今日までの4年間で、世界のサッカーの趨勢はどんな風に変わって来たと分析していますか?
「まず言えるのは、今度のブラジル大会がちょっと特別であることだ。というのもとても暑い地域で大会が開催される。だから普段実践しているようなプレッシングはかけられないし、同じ密度でプレーをすることもできない。同じ試合のリズムも維持できない。足元にボールをキープすることを強いられるのは間違いない。つまり幾つかのチームは、他のチームに比べてハンディキャップを背負うことになる。それが第1点だ。
第2にこの4年間で起こったことは、2010年から'14年までにかけて確認されているスペインサッカーへの評価だ。彼らは2012年のEUROも制覇した。彼らのポゼッションサッカー、つまりボールをコントロールすることで試合全体をコントロールするスタイルが、相変わらず効果的であり続けているということだ。
サイドの選手の重要性が変わらないことに加え、今はディフェンンダーの攻撃参加の重要性がさらに増してきている。後方のプレイメイカーとしての役割だ。サイドの選手がオーバーラップをするのはもちろんだが、センターバックが攻撃の起点となるパスまでも供給する。とりわけ長い距離のパスだ。バルセロナとスペイン代表ではブスケッツがそれを行っている。ときにシャビ・アロンソがそれをすることもある。守備の位置にいながら攻撃を組み立てる選手たちだ。