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W杯の設備費用は総額1兆4500億円!?
開催国の巨大な負担と、潤うFIFA。 

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並木裕太

並木裕太Yuta Namiki

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posted2014/06/12 16:30

W杯の設備費用は総額1兆4500億円!?開催国の巨大な負担と、潤うFIFA。<Number Web> photograph by Getty Images

ブラジル国内では、ワールドカップを巡る政府の姿勢に対して抗議デモが連日行なわれている。国内では貧富の格差が激しく、それが大会運営や治安に影響がないとよいのだが……。

リスクを背負う開催国と、ノーリスクのFIFA。

 一方、開催国にはチケット収入と国内スポンサーシップが割り当てられることになっています。さらに優勝候補に挙げられるブラジルなら、賞金という形で「追加収入」も狙えるでしょう。とはいえ、2010年大会のケースで3000万ドル(30億円)、今大会は3500万ドル(35億円)という優勝賞金は、投資コストに比べれば“雀の涙”でしかありません。ちなみに2010年大会の賞金総額は3億4800万ドル(348億円)で、これはFIFAの大会収入の10%以下、支出の27%に過ぎない規模でした。

 今回のブラジルW杯でも、FIFAは2010年と同等かそれ以上の利益を手にすることが予想されます。しかし「9兆円」という夢のような数字を掲げるブラジルでは、国民の実生活にどれほどの経済メリットがもたらされるのかは全く不透明です。報道される現状を見る限り、むしろデメリットの方が大きいとさえ言えるかもしれません。

 国家的な財政リスクを背負うこととなった開催国と、ほぼノーリスクで大きな利益が約束されたFIFA。世界中が熱狂するであろうW杯の舞台の裏側で、こうした皮肉な構造が生まれていることも知っておくべきではないでしょうか。

(構成:日比野恭三)

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